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カスハラ加害者=消費者という思い込み 企業が従業員を守るために再確認すべきこと(1/3 ページ)

悪質なクレームなど、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止を事業主に義務付ける法案が国会に提出されている。5月16日に衆議院を通過し、今国会で成立の見込みだ。罰則はないものの、すでに東京都では「カスハラ防止条例」が4月1日から施行され、多くの企業でカスハラ対策が進みつつある。

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 悪質なクレームなど、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止を事業主に義務付ける法案が国会に提出されている。5月16日に衆議院を通過し、今国会で成立の見込みだ。罰則はないものの、すでに東京都では「カスハラ防止条例」が4月1日から施行され、多くの企業でカスハラ対策が進みつつある。

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提供:ゲッティイメージズ

 政府の“カスハラ防止法”は、企業に雇用管理上の措置義務を課すものだ。具体的には「事業主の方針などの明確化及びその周知・啓発」「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」「カスハラに係る事後の迅速かつ適切な対応」――などが盛り込まれている。詳細な内容については法律成立後の政府指針で示されることになるが、中身は東京都の条例と重なる部分が多いと思われる。

カスハラの加害者=消費者という思い込み

 そもそもカスハラとは何か。東京都のカスハラ防止条例では「顧客などから就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するものをいう」と定義している。つまり、「顧客などから就業者」「著しい迷惑行為」「就業環境を害する」という3つの要素を全て満たすのがカスハラである。そして、著しい迷惑行為とは「暴行、脅迫その他の違法な行為または正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為」と規定している。

 「暴行、脅迫その他の違法な行為」について、東京都のカスハラ防止指針は「暴行、脅迫、傷害、強要、名誉毀損、侮辱、威力業務妨害、不退去などの刑法に規定する違法な行為のほか、ストーカー規制法や軽犯罪法などの特別刑法に規定する違法な行為を指す」と説明(犯罪に相当する行為は当然ながら許されるものではない)。「正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為」については、「客観的に合理的で社会通念上相当であると認められる理由がなく、要求内容の妥当性に照らして不相当であるものや、大きな声を上げて秩序を乱すなど、行為の手段・態様が不相当であるものを意味する」としている。

 指針ではカスハラに該当する可能性のある社会通念上不相当な代表的な行為類型として、「身体的攻撃」「精神的攻撃」「威圧的言動」「土下座の要求」といった刑法などの犯罪に抵触する行為を指している。顧客の要求内容が就業者にとって不可能な行為や、どのように対応すればよいか分からない抽象的な行為もカスハラに該当する可能性があるとし、以下を例に挙げている。

(1)過度な商品交換の要求:就業者が提供した商品と比較して、著しく高額な商品や入手困難な商品と交換するよう要求する

(2)過度な金銭補償の要求:就業者が提供した商品・サービスと比較して、著しく高額な金銭による補償を要求する

(3)過度な謝罪の要求:就業者に正当な理由なく、上司や事業者の名前で謝罪文を書くことや、自宅に来て謝罪するよう要求する

(4)その他不可能な行為や抽象的行為の要求:就業者に対し、「法律を変えろ」「子どもを泣き止ませろ」などの不可能な行為や、「誠意を見せろ」「納得させろ」のような抽象的な行為を要求する

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