株価急騰の裏にある「期待」と「錯覚」
メタプラネットはもともと、五反田のホテル運営を祖業としていた小型株だった。しかし2024年以降、「ビットコインを大量に購入して保有資産とする」と発表。
これがBTC保有企業として著名な米マイクロストラテジー(MicroStrategy)の戦略を模したものとしてSNSなどで一気に拡散、事実上の「日本版ビットコインETF」とも評されている。
現行法ではビットコインETFの上場は日本では認められていない。しかし、メタプラネットのような「上場企業が、自らビットコインを保有する」という形式にすることで、ETFに代わる事実上の投資手段として、個人投資家も証券口座を通じてビットコインに投資できるようになっている。
そして新NISA口座でメタプラネットを買い、ビットコインが急騰すれば、最大55%にも及ぶ総合課税のビットコイン投資が、一転して無税になる可能性すらある。そういった理由から、新NISA口座のランキングトップにメタプラネットが挙がってくると筆者は考える。
上場企業ならなんでもあり?
だが、上場企業が単にその資産を特定の資産に換えるだけ、という極めて単純なビジネスモデルは是認できるのか。
メタプラネットの時価総額は一時的に5800億円を超えたが、PBR(株価純資産倍率)は一時50倍以上に達し、現在も28.46倍まで落ち着いている。しかし「資産保有」がメイン戦略の企業の価値としては、依然として妥当性を欠いた水準で推移している。
PBRが28.46倍ということは、その会社が直ちに解散した時に受け取れる資産は株式の時価総額の3.5%しかないということになる。つまり、投資家が「1ビットコイン分」の「メタプラネット株式」を購入したと思っても、実際は「0.035ビットコイン」の配分を受け取る権利しか有していないのだ。
こう考えると、メタプラネットをビットコイン投信の代わりとして買った段階で9割以上の資金は“メタプラネットへの期待”というブランドにお金が投じられるといっても過言ではない。これは総合課税の最大税率よりも分が悪い勝負であるといえる。
ちなみに米マイクロストラテジー社は、SaaSツールで一定の世界シェアを有しているなど“地に足のついた”ビジネスも展開している。そのためマイクロストラテジーも単純に一くくりにはできないことは留意されたい。
とはいえ、日本で金融所得としてほぼ純粋なビットコイン投資をするなら現状、メタプラネット程度しか選択肢がない。こうした状況も手伝って、同社のファンダメンタルズや収益力に対する冷静な評価を欠いた「買いの連鎖」が、相場を異常に押し上げているのである。
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