すかいらーくが最高益 外食産業の逆風の中で、好調な理由とは?(6/6 ページ)
すかいらーくHDが、第1四半期の決算を発表した。原材料費の高騰や人手不足という厳しいなかで、同期間としては過去最高益を出せた理由に迫る。
複合的な戦略で、さらなる成長を目指す
2025年度第1四半期は好調なスタートを切ったものの、同社は通期業績予想を据え置いている。金谷社長はその理由として、第1四半期というタイミングに加え、コメや卵を中心としたインフレの影響や、米国経済の不透明感といった不確定要素を挙げている。
特にコメの価格については、購買本部マネージングディレクターの片山信行氏が「十分な在庫契約がある」としつつも、「当初予算比で、年間約8億円の上振れを見込んでいる」と説明。金谷社長も「9月以降の新米価格が見通せず、高止まりが想定されるため、現時点でコメの価格を下げることは想定していない」と補足している。
また、インバウンド需要については確実に伸びており、「しゃぶ葉」などが特に強いものの、「物販のような爆買いとは異なり、飲食店では売り上げへのインパクトがそれほど大きくはない」との認識を示している。
すかいらーくHDの2025年度第1四半期の好業績は、外部環境の厳しさの中でも、「店舗中心経営」による現場力の強化と生産性向上、データと顧客の声に真摯(しんし)に向き合ったメニュー開発、そしてデジタルマーケティングとDXの推進という、多岐にわたる戦略が有機的に結びついた結果だろう。さらに、M&Aによる新たな成長ドライバーの獲得も着実に進んでいる。
今後もインフレや人手不足といった課題は続くと予想されるが、同社がこれらの戦略をいかに深化させ、持続的な成長軌道を描いていくのか。その動向は外食産業のみならず、多くの企業にとって参考になるだろう。
金森努(かなもり・つとむ)
有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師
金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。
2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。大学でマーケティングを学び、コールセンターに入社。数万件の「本当の顧客の生の声」に触れ、「この人はナゼこんなコトを聞いてくるんだろう」と消費者行動に興味を覚え、深くマーケティングに踏み込む。(日本消費者行動研究学会学術会員)。
コンサルティング会社・広告会社(電通ワンダーマン)を経て、2005年に独立。30年以上、マーケティングの“現場”で活動している「マーケティング職人」。マーケティングコンサルタントとして、B to B・Cを問わず、IT・通信、自動車・電機・食品・家庭用品メーカー、金融会社、生損保、自動車販売、EC等、幅広い業種に対応し、新規事業・新商品開発・販売計画・販売のテコ入れ案・コミュニケーションプランの策定等、幅広くマーケティング業務の支援を行っている。講師としても業種を問わず、年間100コマ以上の企業研修に登壇。コンサルティング経験を元に企業課題に合わせた研修のオリジナルのコンテンツやカリキュラムを提供。研修によってマーケティングを「知っている」だけではなく、「業務に生かせるようになること」にこだわっている。執筆は、「初めてでもマーケティングが楽しく体系的に学べる本」をテーマに10数冊刊行。「3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
部下に「仕事は終わってないですが定時なので帰ります」と言われたら、どう答える?
企業にとって残業しない・させない文化の定着は不可欠だ。しかし――。
ナイキ「オワコン化」の足音 株価急落、新興シューズメーカーが影
ナイキの不調には複数の要因が絡んでいるようだ。
部下が相談する気をなくす、上司の無神経な「たった一言」
部下が報連相しようとしたときの上司の何気ない「ある一言」が、部下の心を萎縮させているのだ。

