「1on1をすれば大丈夫」は間違い 若手の心理的安全性を高める“3つの説明”(3/3 ページ)
新入社員や中途採用社員の定着率を高めるためには、心理的安全性を高めることが重要だといわれています。企業は心理的安全性を高めるため、苦心しているように見受けられますが、見落とされがちなことについて社会保険労務士の立場から解説します。
新入社員こそ、社会保険制度や税金の説明が必要
さらに、社会保険制度や税金の仕組みについても説明した方がよいです。新入社員の中には期待していた給料が社会保険料や税金などの名目で引かれ、想像していたよりももらえる額が少なく失望する人もいるからです。
社会保険や税金について、学生時代に学ぶ人は少数です。入社後の研修もビジネスマナーや業界の知識を教えるのが主だと思われます。理不尽に控除されているように思われる社会保険制度ですが、その目的や制度の詳細を説明してあげれば、納得できる可能性が高まります。
例えば、病気やケガで仕事ができない状態にあり、会社を休んだ時にもらえる傷病手当金という手当は、社会保険の加入者のみに設けられた制度です。休業によって収入が下がる、またはなくなってしまうことで経済的に生活に支障が出ないように、給与のおよそ3分の2が支給されます。
昨今では「どうせ年金をもらえないのだから社会保険に入る意味がない」「自分で資産運用して、病気やケガは民間の医療保険で備えた方がよい」という言説もSNS上で散見されます。ただ民間の医療保険は、入院や手術などの際にはお金がおりますが、傷病手当金のように働けなくなった際、長期間にわたってお金が支給されるタイプのものはごく少数。あったとしても傷病手当金ほどは手厚くないのです。
休業制度や手当の詳細を説明すると、「権利を乱用される」と危惧する人もいるかもしれませんが、いずれ知る機会はあります。「なぜ教えなかったのか」という不信感を持たれるよりは、あらかじめ説明した方がよいです。
評価基準の”曖昧さ”が困惑の元
最近ではSNS、さらにAIにより以前とは考えられないくらい、成功するための情報やノウハウを入手しやすくなっています。もちろん、知識だけ入手しても実践しなければ、成果を上げることができませんが、意欲的な学生にとっては、勉強、スポーツ、アルバイトなどあらゆる分野でPDCAを回せば、成果が上げやすくなっています。
しかし社会人になると営業職のように数字が一目で出る職種を除き、「何が評価されるのか分かるようで分からない」という先が見えない状況に陥りがちです。正解が分からなければ、対策も立てようがありません。心理的安全性を高めるため、可能な限り、会社のルールや権利と罰則、昇給制度や評価基準を共有するようにしましょう。
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