氷河期世代支援 “今さら”と思っても絶対にやるべき、これだけの理由(2/3 ページ)
就職氷河期世代のサポートに対する議論が活発化している。当事者からは「今さら……」という声が挙がるが、それでも絶対に支援を提供していくべきだと筆者は考える。
近い未来に懸念される、介護離職問題
国は2019年に「就職氷河期世代支援プログラム」を開始した。正規雇用者を30万人増やすことを目標に、氷河期世代を正社員として採用する企業に助成金を出したり、国家公務員や自治体職員の募集で氷河期世代の枠を設けたりした。しかしコロナ禍と重なったこともあり、一定の効果にとどまった。
最近は、「このままでは老後の生活に困窮する人が大幅に増える」という「氷河期世代の将来」を問題視し、年金制度改革や支援の充実を訴える声が目立つようになった。
無職や低収入で親の援助を受けながら暮らす人は、親が亡くなれば収入が途絶える可能性がある。なんとか経済的に自立している人も、親の介護が始まれば出費がかさむし、時間も取られる。仕事と介護の両立支援策は非正規社員にまでは届かず、介護離職に至る可能性が高い。そして、低収入ゆえに本人の老後の年金額も低い見込み……など、今後10年、20年の間に顕在化するであろう問題が山積みだからだ。
100万人の氷河期世代が抱える事情と必要な支援
氷河期世代に当たる人はおよそ2000万人いるが、その全てが困っているわけではない。国が支援の対象としているのは、「A.不安定な就労状態」「B.働くことを希望しているが無業」「C.ひきこもり」の約100万人だ。
その中でも「A.不安定な就労状態」は約50万人いるとされる。国はこの人たちの正社員化を目標に、企業に氷河期世代を積極的に雇うよう働きかけている。
そのメリットをアピールするために公開されている成功事例の中では、非正規であっても長年の経験がありスキルが高い、苦労してきたからこそ真面目に働く、若手と年配者のコミュニケーションの橋渡し役になっているなど、雇用した氷河期世代の能力を評価する企業が多い(参考:厚生労働省「就職氷河期世代の人材活用〜企業を元気にする12の好事例集〜」)。
そのような人たちが正当に評価され、安定した職を得ることは非常に重要だ。しかし、同じ「A.不安定な就労状態」にある人たちの中にもさまざまな事情がある。異なる職種を転々としていたり、単純作業しか経験できていなかったり、スキルが積み上がっていない人も多い。苦労してきたがゆえに心身の不調があり継続的に働くのが困難な状態にある人もいるだろう。
日本総合研究所は、「A.不安定な就労状態」にある人たちをさらに4つのカテゴリーに分けて分析している。カテゴリー分けの軸は、正社員として働くことへの意欲や自信、これまでの就労状態だ(下図)。
企業に正社員として雇用され、評価が得られやすいのは、4つのカテゴリーの中でも(1)の「特定の仕事に長年勤務し、専門性を有する」タイプや、(3)の「派遣やアルバイト、パートを繰り返しているが、働くことにおいては意欲的」というタイプだろう。
働くことへの自信や意欲の低い(2)や(4)のタイプや、「B.働くことを希望しているが無業」「C.ひきこもり」の人には、より手厚いケアが必要だ。
国は、今は働いていない人向けの就職の準備や、引きこもりの方の社会参加などを目指した支援も行っている。これらが実を結び、安定的な職業に就いて経済的に自立できるというケースもあるだろう。
しかし、それには時間がかかる。時間をかけているうちに高齢者の年齢に達する人も多いと見られる。だから、仕事に就くことをゴールとする支援だけでなく、社会保障制度の改革や、住まいの確保を支援する制度、親の介護の負担を軽減する制度など福祉の充実が急務だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
やっぱり「就職氷河期世代」が一番“気の毒”なワケ
なぜ就職氷河期はこれほど長期にわたり、かつ多くの人が影響を受けることになったのでしょうか。
窓際でゲームざんまい……働かない高給取り「ウィンドウズ2000」が存在するワケ
「ウィンドウズ2000」「働かない管理職」に注目が集まっている。本記事では、働かない管理職の実態と会社に与えるリスクについて解説する。
日本人はなぜこれほどまでに「学ばない」のか 背景にある7つのバイアス
学びの習慣があまりにも低い日本の就業者の心理をより詳細に分析すると、学びから遠ざかる「ラーニング・バイアス(偏った意識)」が7つ明らかになった。日本人はなぜこれほどまでに「学ばない」のか。
「管理職になりたくない」 優秀な社員が昇進を拒むワケ
昨今は「出世しなくてもよい」と考えるビジネスパーソンが増えている。若年層に管理職を打診しても断られるケースが見受けられ、企業によっては後任者を据えるのに苦労することも。なぜ、優秀な社員は昇進を拒むのか……。
「管理職辞退」は悪いこと? 断る際に重要な2つのポイント
昨今「管理職になりたくない」「管理職にならない方がお得だ」――という意見が多く挙がっている。管理職にならず、現状のポジションを維持したいと考えているビジネスパーソンが増えているが、管理職登用を「辞退」するのは悪いことなのだろうか……?

