コロナ禍でも「売上17%増」達成、カギは“数字”にあった――伊勢の食堂が貫くデータ経営とは?(1/2 ページ)
コロナ禍で多くの飲食店が打撃を受けた。そんな中でも、伊勢の食堂「ゑびや」は、売上17%増を達成したという。
この記事は、『仕事を減らせ。 限られた「人・モノ・金・時間」を最大化する戦略書』(小田島春樹著、かんき出版)に掲載された内容に、かんき出版による加筆と、ITmedia ビジネスオンラインによる編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
飲食業が大打撃を受けたコロナ禍。その中でも伊勢の食堂「ゑびや」を経営する小田島春樹氏は、データの蓄積と検証により、客層変化に合わせた経営戦略を実行した。その結果、売り上げは前年比17%増となる。さらに市場変化に合わせた新しい店舗をつくり、年間5000万円もの売り上げを達成した。小田島氏が上梓した『仕事を減らせ。 限られた「人・モノ・金・時間」を最大化する戦略書』より、その行動内容と考え方を解説する。
売り上げを増やすには、マーケットの検証を継続的に行うことが重要です。客層や顧客ニーズが変化することはよくあります。常にデータを追っていれば、こうした環境変化をいち早く捉え、商品やサービスに反映できます。
例えば、あるSNSの発信で若い世代に伊勢の人気が高まったとします。そのときにいち早くキャッチできていたら、看板のデザインを変える、新メニューを考えるなど、工夫を凝らすことができるはずです。
私たちは「ゑびや」の入り口前に設置しているセンサーカメラで通行客のデータ(=人流データ)を継続的に取得しています。その画像解析によってお客さまの性別・年代などの属性や属性別の商品販売数などのデータを日々記録しています。この蓄積されたデータが強みとなり、2020年に突如として始まった新型コロナウイルスの感染拡大による変化にも、迅速に対応できました。
コロナ禍でも売り上げ「17%増」を実現した経営戦略とは?
新型コロナウイルス流行前の「ゑびや」は、年齢層が比較的高めのお客さまが中心でした。しかしコロナ禍で食堂を利用したお客さまの属性や特徴がどう変化したかを見ると、30代以下の割合が65.7%(21.9%増)、40代以上の割合が34.3%(21.9%減)となり、客層が若い世代中心へと転換したのです。客層がこれだけ大きく変わったなら、売れる商品も変わるはずです。
では若い世代には何が売れるのか。年代別商品販売数のデータベースから、20代のお客さまが前月に注文したメニューを確認すると、「お茶漬けやうどんが平均販売数より売れている」といった世代の特徴を把握できます。
すると、次のような仮説が立ちます。
- 店頭のメニュー看板を「お茶漬け」や「伊勢うどん」など、若い世代にも手が届きやすい価格帯の商品にすればシェアが上がる
- 「お茶漬け」や「伊勢うどん」のバリエーションを増やせば販売数が増える
また、曜日別の比率を見ると「日曜と月曜は20代が多い」という傾向も分かりました。曜日に合わせて若者向けのチラシを配るなどのプロモーションも効果がありそうです。
これらの仮説を実行に移し、その効果をデータで測定して検証。その結果をまた次のアクションに反映する。このサイクルを回して新しい客層に合った商品やサービスへ切り替えていきました。
その結果、来客予測の数字を大幅に上回る来客があり、2020年の年間売り上げは前年比で17%増となりました。
市場規模が縮小しても売り上げは向上できる
コロナ禍の影響で街の通行者数が減ったにもかかわらず売り上げが増えたのは、シェアが上がったからです。
当時の状況をたとえるなら、店を構える場所がある日を境に東京の巣鴨から原宿に変わってしまったようなもの。高齢者が集まる巣鴨で売れていた商品が、中高生であふれかえる原宿でも売れるとはとうてい思えません。私たちの店のシェアが増えたのは、他店が巣鴨時代のままの経営を続ける中で、いち早く原宿のマーケットに対応したからです。
コロナ禍では人々の外出が制限され、飲食店だけでなく、あらゆるサービス業が多大な影響を受けました。それでもシェアを上げることに集中すれば、市場規模が縮小する局面でも、売り上げを維持・向上できる可能性は十分あるのです。
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