インタビュー
無印良品×書店=6次産業? 橿原書店の初月売上が示す“手を取り合う”の未来(4/4 ページ)
橿原書店と無印良品がタッグを組み、書店の6次産業化に挑戦している。初月の売り上げはどうだったのか。新たな“手を取り合う”ビジネスモデルの可能性と未来を取材した。
「共創型モデル」は書店業界に新たな可能性を示すか
橿原書店の成果は、協業する無印良品側からも高く評価されているという。地域商材の展開や地域団体との連携など、無印良品のブランドだけでは難しい取り組みを、書店が担うことで相互補完の関係を築いている。
無印良品での買い物が主目的の客からも「気になっていた本を見つけた」「ついでに本が買えて便利」といった声が寄せられ、反応は上々のようだ。橿原書店は、業界が直面する「わざわざ書店に足を運ぶ機会の減少」という課題に対し、生活動線上での書籍販売という解決策を示している。
一方で、課題も見えている。地域資源のさらなる発掘に加え、現状では書店目当ての来店客が少ないことから、橿原書店単体での認知度向上も重要な課題だ。
日販は橿原書店の成果を踏まえ、共創型モデルの全国展開を目指す。今回は日販の直営だが、成果が出れば、パートナーの書店と無印良品を引き合わせて広げていく考えだ。
山元さんは「書店の6次産業化」(※)という表現で、今後のビジョンを語る。書籍販売だけでなく、地域のためにあらゆる機能を担う存在として書店を再定義し、リアル店舗ならではの価値を提供していく考えだ。
(※)6次産業:農業や漁業、林業などの第1次産業に、加工(第2次産業)や販売・サービス(第3次産業)を組み合わせて、一次産業の付加価値を高める取り組みのこと。「書店の6次産業化」とは、書店が単なる「本を売る場所」ではなく、地域の文化や商品、サービスと連携し、さまざまな役割を担うことを意味している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
2028年、街から書店が消える? “救世主”になるかもしれない「2つ」のビジネスモデル
書店業界が深刻な危機に直面している。全国の自治体の4分の1以上で書店がゼロとなり、2028年には街から書店が消えるという予測さえある。そんな中、新たな書店モデルが登場した。
「異業種×本屋」でどうなった? ホテルに「風呂屋書店」をオープンして、見えてきたこと
札幌市のホテルに「風呂屋書店」がオープンして1カ月が経過した。書店が減少する中、“異色本屋”の現状を聞いた。
なぜ日本のマンガは、次々に「メガヒット」するのか
日本にはたくさんの漫画家がいて、たくさんの作品が生み出されています。しかも「ヒット作品」も多いわけですが、なぜこのような環境を生み出せているのでしょうか。
日本のアニメは海外で大人気なのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が米国でもヒットしている。このほかにも日本のアニメ・マンガは海外市場で勝負できているのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか。その背景に、構造的な問題があって……。

