映画館のスクリーンに並ぶまで 洋画ビジネスの舞台裏を読む:『映画ビジネス』(2/2 ページ)
洋画の配給はどのように行われているのか? 海外映画祭での買付けから、日本での上映・宣伝に至るまで、映画ビジネスの裏側と配給会社の役割を解説する。
海外映画祭でヒットする映画を買付ける方法
洋画メジャーの国内現地法人(支社)は、米国からの作品を日本向けに配給宣伝していますが、それ以外の作品を配給しているインディ系の会社は作品をどのように調達しているのでしょうか。映画を配給するには買付けをしなければなりません。
まず、世界中の映画祭や見本市(映画マーケット)へ参加して、映画の上映権を獲得するのが手段のひとつです。映画館での上映権だけでなく、契約によっては二次使用と言われるDVDやBD(ブルーレイディスク)にして販売する権利、テレビで放映する権利、動画配信プラットフォームで配信する権利なども含まれます。国際映画祭は華やかな映画の祭典であるとともに、映画の権利を売買する場でもあるのです。
映画マーケットには、世界中から作品が出品されますので、映画バイヤーと呼ばれる担当者は、出品リストから監督や脚本家、出演俳優などで目星をつけて、鑑賞します。作品によっては企画書だけ、シナリオ段階のものもあり、それを読んで、ヒットする可能性のある作品、日本で公開する意義のある作品を見極めます。
人気のある作品は競合となり、買付け額が高騰する場合があるので、買付け総予算とにらめっこしながら権利元との交渉力と、高騰しても買付けるべきかどうかなどの判断力が問われ、そのためには語学力、知識が必要となります。買付けることができなければ、国内で年間に配給公開する本数が減り、会社の翌年以降の売上にも直結してきますので、他社と共同で買付けることもあります。
ミニシアターブームの全盛期には、1社から数名のバイヤーが参加し、他社に先を越されないように手分けして作品を鑑賞して買付けていました。しかし、海外の映画祭に参加するには費用もかかりますから、近年は過去に買付けた作品の興行実績などから、権利元との信頼関係を構築し、海外の映画祭にわざわざ参加しなくても、メールやWebミーティングなどで買付ける会社もあるようです。
自身の見極めによって会社で買付けた作品が、日本でヒットし、社会現象を起こして、買付け額と配給宣伝費以上の利益を劇場で生み出すことは、映画バイヤーの醍醐味と言えるでしょう。
著者プロフィール:和田隆(わだ・たかし)
映画ジャーナリスト、プロデューサー
1974年東京生まれ。1997年に文化通信社に入社し、映画業界紙の記者として17年間、取材を重ね、記事を執筆。邦画と洋画、メジャーとインディーズなどの社長や役員、製作プロデューサー、宣伝・営業部、さらに業界団体などに取材し、映画業界の表と裏を見てきた。現在は映画の情報サイト「映画.com」の記者のひとりとして、ニュースや映画評論などを発信するとともに、映画のプロデュースも手掛ける。プロデュース作品に『死んだ目をした少年』『ポエトリーエンジェル』『踊ってミタ』などがある。田辺・弁慶映画祭の特別審査員、京都映画企画市の審査員も務める。
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