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「GIGAスクール構想」立ち上げで陣頭指揮 文科省「文教政策トップ」に聞く:日本のデジタル教育を止めるな(4/4 ページ)

教育デジタル化の大きな転換点となった「GIGAスクール構想」はなぜ必要だったのか。審議官としてGIGAスクール構想立ち上げの陣頭指揮をとり、現在は文部科学審議官である矢野和彦氏に、MM総研代表の関口和一氏がインタビューで迫る。

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GIGAスクールの成果と課題

――GIGAスクールの成果や課題をもう少し深堀りしてお聞きしたいです。

 GIGAスクール構想後の初めての国際比較、PISA調査2022(図4)では、3分野全て(注5)で世界トップレベルの結果となりました。2018年調査より2022年の方が良くなった。

 2018年の結果からもう1つ課題が読み取れています。PISA調査は2015年からコンピューター(CBT)化(注6)されています。さらにいうと、2015年調査では従来通りの問題をCBT化していましたが、日本の成績が悪かった2018年は「情報活用能力」を測ることに重点を置いた問題がかなり出題され、調査が切り替わったのです。

 それまでは本や新聞など、プロが校正校閲した文章しか出題されませんでした。ところが2018年の調査では、ブログや書評あるいはネットに出ている広告記事などが問題に出題され、情報の質や信ぴょう性を評価したうえで自分の意見を述べる力を測るようになり、日本の子どもたちはこういう問題は非常に弱いことが分かっています。

編集(注5) 読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野となる

編集(注6) Computer Based Testing の略 例えば日本でも2026年から司法試験での採用が予定されている


図4 PISA2022の日本の結果(PISA2022のポイント 文部科学省 R5 12.5)

――OECDは調査を通じ次世代の国力を測ろうとしていますね。

 フェイクニュースがありふれた社会で、子どもたちはどうやってそれを見破るのか? メディアリテラシーを身に付ける必要があり、少なくともその意識をもつことが生きていく上で必要になると考えています。この観点は従来型の知識技能を測るものではないのです。こういうところをしっかりフォローしないといけないという意識も、GIGAスクール構想のスタート地点であったわけです。

 特に読解力の低下は、多くのメディアがとりあげました。「第2のPISAショックか」というふうに批判を受けたのですが、その批判の中身は私としては納得できないものが多かった。

 当時、あるテレビニュースで「ゴンギツネ」の授業が取り上げられました。ゴンギツネは日本のある教科書で扱う物語で、日本の国語の先生が1番力を入れている得意な分野です。

――主人公の心情の移り変わりを読み取り考えるという。

 小学校の先生たちは「ゴンギツネでどうやって子どもたちを泣かせるのか」というのがまさに腕の見せ所。素晴らしいことだと思いますし、それを決して否定するつもりはないです。しかし報道では、日本の国語教育はこういう風に立派にやっているが、なんでPISA調査がこんなに悪かったんでしょうねと取り上げられた。PISAが測ろうとしている能力を読み解かず、ずれた指摘になっていると感じました。

――日本人が常識として捉える読解力と、これから世界で求められる読解力がずれてきているというわけですね。デジタル活用はインターネットを通じてさまざまな情報と向き合い、世界とつながることでもありますよね。

 PISA調査のなかで、数学の授業でデジタルリソースを使っているために気が散っているという比率が日本は圧倒的に低いという結果が出ています。私は、この結果は、授業で本格的にデジタルが活用されていないことの裏返しもあると捉えています。もっと活用できるように底上げしていかないといけない。物事は「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということもあると思いますが、足りないのも全然だめだと思っています。

――デジタルかアナログか、二項対立ではなくて、それぞれのいいところを使いましょうということですね。スウェーデンでは行き過ぎたデジタル活用で教育の質が下がっているということで、アナログに回帰するという政策が発表されました。

 「デジタルのいいところをもっと使いましょう」というのが今の日本の状態だと思います。20年前からデジタル活用を進めているスウェーデンやフィンランド、エストニアと比較する以前の問題というのが、大変残念ながらこの数値にも表れているということですね。 ですから「使いすぎから生まれる弊害」という心配は早いです。もっといえばスウェーデンやフィンランドで使い過ぎの弊害が出ているということであれば、日本はそれを踏まえて対処していけばよいと考えています。

 以上がインタビュー内容だ。次回、いよいよGIGAスクール構想立ち上げ時の実情、仕様策定時の真相に迫る。

著者情報:関口和一(せきぐち・わいち)

(株)MM総研代表取締役所長、国際大学GLOCOM客員教授

1982年一橋大学法学部卒、日本経済新聞社入社。1988年フルブライト研究員としてハーバード大学留学。1989年英文日経キャップ。1990年ワシントン支局特派員。産業部電機担当キャップを経て、1996年より編集委員を24年間務めた。2000年から15年間、論説委員として情報通信分野などの社説を執筆。日経主催の「世界デジタルサミット」「世界経営者会議」のコーディネーターを25年近く務めた。2019年株式会社MM総研の代表取締役所長に就任。2008年より国際大学GLOCOMの客員教授。この間、法政大学ビジネススクールで15年、東京大学大学院で4年、客員教授を務めた。NHK国際放送のコメンテーターやBSジャパン『NIKKEI×BS Live 7PM』のメインキャスターも兼務した。現在は一般社団法人JPCERT/CCの事業評価委員長、「CEATEC AWARD」の審査委員長、「技術経営イノベーション大賞」「テレワーク推進賞」「ジャパン・ツーリズム・アワード」の審査員などを務める。著書に『NTT 2030年世界戦略』『パソコン革命の旗手たち』『情報探索術』(以上日本経済新聞)、共著に『未来を創る情報通信政策』(NTT出版)、『日本の未来について話そう』(小学館)『新 入門・日本経済』(有斐閣)などがある。

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