TBSテレビ社長に聞くシェアオフィス整備の狙い 「強いJNN系列」を作るには?:11局の東京支社が入居(2/2 ページ)
TBSテレビの龍宝正峰社長に、JNN系列局の東京支社が入居できるシェアオフィス「JNN Park!」を開設した狙いをインタビューした。
系列局を効率化や人材交流で支援
JNN系列の地方局は、それぞれが独立した経営になっていて、比較的長い歴史を持つ局も多い。TBSと系列局の関係を、龍宝社長は「パートナー」と表現する。
「放送免許はエリアの免許でしかありません。だからこそ系列というものがあります。エリアの報道をしっかり司っていただいている系列のみなさんと、私たちがタッグを組むことが最も重要だと思っています。エリアごとに強い局がいて、私たちが作るコンテンツをそのエリアでも広げられることが大事ですので、パートナーとしての関係は揺らぐものではないと思っています」
一方で、JNN Park!によって系列局を支援する背景には、地方局の経営環境が厳しくなっていることがある。
「以前は連携をしなくても何とかなっていました。ただ、地方局の経営問題が出てきて、どうやって効率的に会社を運営していくのかを考えたときに、この取り組みは一助になるのではないでしょうか。必要なのは、系列全体としての効率化ですね。まずは東京支社で、一部の局と一緒にやり始めたところです」
TBSテレビではシェアオフィス以外にも、系列局への支援を広げつつある。それは人材交流だ。TBSテレビの社員と系列局の社員がお互いに出向する機会が、報道だけでなくさまざまな部署で増えている。
具体的には、TBSテレビでDXを担当しているイノベーション推進部の社員が系列局に出向して、業務のDXを支援するケースや、系列局の営業系の社員がTBSテレビに出向して、デジタル広告の営業を学ぶケースなどが出てきた。生成AIなどを活用した業務効率化も、TBSテレビで実現できたことを系列局と共有している。
龍宝社長は民放の動画配信サービス「TVer」の社長を務めた。TBSとJNNのニュースサイト「TBS NEWS DIG Powerd by JNN」や、「TVer」などのデジタルコンテンツを収益化することは、キー局以外では難しいのが現状だが、系列局に対して一緒に取り組むことを呼びかけている。
「ローカルニュースを電波で発信できるのはローカル局だけですが、いまは全国にインターネットで情報を発信できるようになったので、そこをさぼると他の人たちに全部取られてしまうだけです。守るだけでは成長しないと思うので、守るところと攻めるところを、しっかり両方持っていないといけないのかなと、系列局には申し上げているところです」
「今まで放送の電波でしか発信できなかったことが、他のツールでもできるようになっているわけですから、こんなチャンスはないですよね。世の中のお役に立てるコンテンツを出すチャンスをいただいていることを肝に銘じて、正しい情報や健全な娯楽を届けられるようにしていく。そのためにもクリエイティブ・ファーストでいくべきだと考えています」
強い経営ができるJNNの仲間を作っていきたい
TBSテレビが系列局に対するさまざまな支援を広げていることについて、龍宝社長は「強い仲間を作っていきたい」と思いを語る。
「系列のみなさんのゴールデンタイムの一番重要な時間帯を、私たちのコンテンツで借りているわけですから、各エリアにおいて評価していただけるコンテンツを発信していくことが最大のポイントだと思っています。それはずっとやり続けようと思っています。私たちがそれをしっかり準備できれば、歴史もあって、地元で強い放送局とタッグを組んでいますので、各エリアで強い報道をしてほしいし、地元に密着したサービスを組み立てられるようにしてほしいと思っています」
「そのためにも、このような場所を用意することで、いろいろな知見が共有されます。この局でこういう成功ができたのであればうちでもできるかもしれない、といったきっかけを提供できれば最高だと思います。支援を通して系列の効率化を図って、より足腰の強い企業経営ができるJNNの仲間を作っていきたいというのが一番の思いですね」
系列としての一体感を高めることができるのが、TBSテレビとJNN系列の強みといえる。JNN Park!がつながりを深める場になることは間違いないだろう。
著者プロフィール
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで大学問題、教育、環境、労働、経済、メディア、パラリンピック、大相撲など幅広いテーマで執筆。著書に『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)、『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書・筑摩書房)。HPはhttp://tanakakeitaro.link/
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
フジ新社長はアニメ畑出身 「異色だが期待大」な、決定的な理由
フジテレビジョンの清水賢治新社長は『ドラゴンボール』『ちびまる子ちゃん』『ONE PIECE』など国民的なメガヒットアニメを企画・プロデュースしてきた。これまでフジテレビの社長とどう違うのか? アニメ業界のビジネスモデルからひも解いてみたい。
TBS佐々木卓社長に聞く、地方局の東京支社をシェアオフィスに移転する狙い 「JNN系列をさらに強い集団に」
港区赤坂に完成したシェアオフィスに、地方の放送局の東京支社が相次いで移転した。移転しているのはTBSをキー局とするニュースネットワークであるジャパン・ニュース・ネットワーク(JNN)系列の地方局。TBSのトップである佐々木卓社長を直撃した。
TBSと地方局、「放送業界初」の狙いは? JNN系列地方局の約半数が東京支社をシェアオフィスに移転
コロナ禍で企業の在宅勤務が進む中、港区赤坂に完成したシェアオフィスに、地方の放送局の東京支社が相次いで移転した。移転しているのはTBSをキー局とするニュースネットワークであるジャパン・ニュース・ネットワーク(JNN)系列の地方局。その狙いに迫った。
上場企業の「想定時給」ランキング、3位三井物産、2位三菱商事 8000円超えで「ぶっちぎり1位」になったのは?
上場企業の「想定時給」ランキング……。3位三井物産、2位三菱商事に続き「ぶっちぎり1位」になったのは?
「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相
鳥山明氏の『DRAGON BALL(ドラゴンボール)』の担当編集者だったマシリトこと鳥嶋和彦氏はかつて、同作のビデオゲームを開発していたバンダイに対して、数億円の予算を投じたゲーム開発をいったん中止させた。それはいったいなぜなのか。そしてそのとき、ゲーム会社と原作元の間にはどのような考え方の違いがあったのか。“ボツ”にした経緯と真相をお届けする。





