鳥貴族はなぜ生き残れたのか さくら水産と分かれた“居酒屋の十字路”:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
「さくら水産」の大量閉店が話題になっている。同じ激安居酒屋チェーン「鳥貴族」にあって、「さくら水産」にないものとは――。
今の居酒屋に求められるのは
しかし、コロナ禍でそうしたカルチャーも消えた。酒を飲みに行くのは、仕事など関係なく本当に気の合う仲間や、友人、カップルなどがメインとなった。そういう人同士で良い時間を過ごす居酒屋となれば、大切なのは「付加価値」だ。
「値段は高いけれど、すごくバズっている人気店」とか「とにかく魚料理が最高でインフルエンサーが激推ししている」とか、その辺のチェーン居酒屋にはない価値が求められる。
筆者の地元には、昭和の雰囲気が残る「昼飲みの聖地」のような飲み屋街がある。店もお世辞にもきれいとは言い難いし、焼き鳥などの味だって値段相応だ。しかし、休日になるとそれらの居酒屋に、開店前だというのに若者たちが列をなして、スマホで写真や動画を撮っている。要するに、レトロな街並みも合わせてこの雰囲気に「価値」があるのだ。
赤字覚悟のメニューで、客を引きつける手法は飲食店、特に居酒屋などでは大事なので否定はしない。しかし、客というものは基本的にわがままなので、「安さ」で釣られた客は、もっと貪欲に安さを求めていく。
それはこれから急速な人口減少で経済が冷え込むことが確定している日本では、破滅的な戦法といわざるを得ない。
客の数が減るのだから単価を上げていくしかない。そのためには客に提供する「価値」をどう上げていくべきか。外食業界の皆さんは「もっと赤字覚悟で安くしないと潰れるよ」という社会の同調圧力に屈することなく、他店にはない「付加価値」を高めていただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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