なぜ「カレー店」の倒産が続くのか 個人店を追い詰めるチェーンの戦略(4/4 ページ)
帝国データバンクの調査によると、2024年度のカレー店の倒産件数は過去最多となった。飲食業界ではさまざまな業態で倒産が相次いでいるが、その理由は何なのか……。
あらゆる業界で、個人店が存続の危機に
カレーやラーメンだけでなく、さまざまなチェーン企業が新業態に進出し始めている。例えば、スシローが「天ぷら定食」を始め、串カツ田中が高級とんかつ店を立ち上げ、コメダ珈琲店がおにぎり専門店を展開した。
どの業界も成熟が進み、市場規模はすでに頭打ちになっている。そして、人口減少時代で内需に限界があることから、新業態へ果敢に挑戦する。この傾向は今後も変わることはなく、むしろ進んでいくだろう。
そうなったとき、あらゆる業界で「個人店」は淘汰(とうた)されていくかもしれない。
それが時代の流れであり、消費者がそれを選ぶならば、その流れに抗っても意味がない。また、本当の意味で顧客に選ばれる個人店であれば、チェーンが進出したとしても生き残るだろう。ただ、このような状況の中で、個人店同士の争いが激しくなり、本来であれば生き残れた店がなくなってしまう……。そんなことも、今後は起こり得るかもしれない。
「カレー店の倒産件数が過去最多」というニュースからは、そのような個人店とチェーン店をめぐる力関係の一端も見えてきそうだ。
著者プロフィール・谷頭和希(たにがしら かずき)
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「麻布台ヒルズ」はなぜ批判されるのか? 森ビルが“共感されにくい”理由
「第2六本木ヒルズ」の計画を進めている森ビル。これまでも、都市開発により都市の安全性を高めたり、緑化を強化したりと、大きく貢献しているにも関わらず、なぜか批判の声が目立つ。その理由は何なのか?
「廃虚アウトレット」の乱立、なぜ起こる? 絶好調なモールの裏で、二極化が進むワケ
業績を大きく伸ばすアウトレットがある一方で、ほとんど人も来ず、空きテナントだらけのアウトレットが増えている。その原因は何なのか?
「紅茶戦争」の幕開け? セブンやスタバが注力するティー業態の裏側
これまでコーヒーの提供を行ってきたコンビニやコーヒーチェーン各社が、紅茶事業にも注力し始めている。コーヒーに続き、「紅茶戦争」の幕開けとなるのか……。
「中野サンプラザ 白紙化」の衝撃 なぜ再開発は止まったのか
再開発が頓挫する場所が出ている。資材や人件費の高騰などが原因ではあるが、今後の再開発はどうあるべきなのか……。
入場料1万円超えは当然 ディズニーやUSJの止まらない値上げが、「消耗戦」を招くワケ
次々と値上げとなる遊園地の入場券。値上げにより、入場者数が減って来園者が快適に過ごせるというメリットもあるようだが、果たして来園者はそれをきちんと享受できているのか……。

