新人記者が聞いた、ビズリーチ創業者・南社長の「確かな未来から逆算する」思考術(2/3 ページ)
転職サイト「ビズリーチ」を立ち上げ、現在はビジョナルの社長を務める南壮一郎氏に、アイティメディアの新人記者が“未来を見据えて動く”ためのヒントを聞いた。
未来から逆算する──ビズリーチ立ち上げ時の視点を聞いた
――ビズリーチを立ち上げた当時も、そのような視点で転職市場が拡大していくことを見越していたのでしょうか?
例えば、米倉さんの世代の場合、40年後も同じ会社で働いている人は少ないと思う。僕もよく、就職活動をしている大学生に「40年後、うちの会社で働いていると思う人は手を挙げて」と聞く。もちろん、残ってくれたらうれしいよ。だけど、何も考えることなく、40年うちの会社にいることしか思わずに、手を挙げた人は採用しない。
――昨年、就活をしていた人間からすると、思わず「働きます!」と答えたくなってしまいますが、確かに40年後も同じ会社で働いているとは限らないですよね。転職が当たり前になった背景には、どんなことがあると思いますか?
ビズリーチを起業(2009年)した16年前は、まだまだ終身雇用の仕組みが残っていたんです。ただ、今の若い世代のほとんどは、1社のみで働き続けることはないんです。その理由の一つとして、DXによって競争が激しくなっていくから。情報が可視化されればされるほど、ビジネスモデルなどがまねされやすくなるわけですよ。
――インターネットなどによって情報が公開されるようになったことで競合他社などにまねされやすくなり、競争が激化したのですね。
そうです。例えば、食べログを使ったことはありますよね?
――はい。
昔は、食べログのサービスはありませんでした。だから、知る人ぞ知るお店がたくさんあったんですよ。だけど多分、今は日本のほとんどの名店が食べログに載っている。そうすると、良い店は人気になる。駄目な店は潰れる、または良い店のまねをする。
だから、どんどんレベルが上がって、競争も激化していくわけです。まねをしまくるので、ビジネスモデルの寿命が短くなるんです。
――1社に長くとどまる働き方が現実的ではなくなったのですね。
ところで、米倉さんは何歳まで生きると思う?
――えっ、100歳以上生きたいです!
素晴らしい。でも、今の日本人の平均寿命って何歳なの?
――85歳くらいだったと思います。
そうだね。平均寿命は今後、伸びていくでしょう。米倉さんが100歳以上生きるとしたら、何歳まで働きますか?
――80歳くらいでしょうか。
あれ? 日本って今、定年退職は何歳だっけ?
――65歳です。
あらら。また不都合な真実が起こっているね。何で定年が65歳なのかというと、社会保障が維持できないから。60歳でみんなが引退したら、その後の30、40年分を年金で支えるのは、難しい。だから、80歳以上まで働きたいというか、働かなきゃいけない。
僕が社会人になった時、定年退職は60歳だったんです。「大学を卒業して、38年働けばいい」って言われていたんですよ。だけど、知らないうちに、働く期間が60年とかになっている。社会人になってからまあまあ働いていたけれど、「あれ、まだスタートラインだった……」みたいな。
だから、雇用が流動化するのは当たり前。これまでの日本の大企業では、人があまり辞めないから新しい人もあまり入ってこなかった。経営陣と人事部長だけで、社員がどんな働き方をしているのか、だいたい把握できていたんです。
でも、今後は人がどんどん入れ替わるから、誰が働いているのか分かんなくなっちゃうわけですよ。だから“人材活用の仕組み作り”に対するニーズが高まっていく。
【2025年6月16日午後4時00分 南社長への追加取材をもとに、より適切な表現に修正しました】
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