コラム
今や対面決済の半分が「タッチ」に――iD・QUICPayが撤退し、Visaが独走するワケ(4/5 ページ)
わずか4年で決済インフラは激変。Visaタッチ決済の爆発的成長が、日本独自のiD・QUICPayをのみ込み、国際標準が市場を制圧する――その舞台裏に迫る。
標準で負けた日本の決済
重要なのは、iDやQUICPayが技術的に劣っていたわけではないことだ。むしろ実用性では、現在のタッチ決済を上回る面が多かった。
ユーザーにとっての使い勝手も、必ずしもタッチ決済のほうが優れているわけではない。iDやQUICPayなら「iDで」「QUICPayで」と明確に伝えられ、決済端末のロゴを見れば、対応しているかどうかも一目瞭然だ。一方、タッチ決済は混乱状態だ。いまだに「クレジットで」「Visaで」「タッチで」「カードで」と表現が統一されず、店員も戸惑う。タッチ決済マークがあっても使えない端末も珍しくない。
技術仕様でも、FeliCaは処理速度と通信安定性に優れ、日本の商習慣に最適化されていた。
それでもタッチ決済の追い上げを許したのは、グローバル化という巨大な潮流があったからだ。インバウンド需要の拡大で、外国人がそのまま使える決済手段の重要性が増した。Visa/Mastercardのタッチ決済なら海外発行カードでも利用できるが、iDやQUICPayは日本専用だった。
カード会社にとっても、複数決済方式の併存より世界共通仕様への統一の方が運用コストを削減できる。技術の優劣ではなく、グローバル化への適応力の差が勝敗を分けた。
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