急増するIT業界のM&A 混乱する現場でエンジニア離職を防ぐ3つの考え方(1/3 ページ)
2025年5月に発表された、アクセンチュアによるゆめみ(京都市)の買収は、IT業界におけるM&Aの動向を象徴する事例の一つとして注目を集めました。IT業界におけるM&A件数は過去10年で約3倍と急増しています。その背景には、何があるのでしょうか。
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著者:芦野 成則
レバテック株式会社 リクルーティングアドバイザー
一橋大学を卒業後、官公庁に5年半勤務し、2019年にレバレジーズに中途入社。企業の採用支援を行うリクルーティングアドバイザーとして、多角的な視点から採用支援を実施
2025年5月に発表された、アクセンチュアによるゆめみ(京都市)の買収は、IT業界におけるM&Aの動向を象徴する事例の一つとして注目を集めました。このような買収事例は増加傾向にあり、日本M&Aセンターが2024年12月に発表したレポートによると、IT業界におけるM&A件数は過去10年で約3倍に増加しています。
さらに、近年はM&Aが多様化しており、なかでも未上場スタートアップ同士のM&Aが注目を集めています。例えば、クラウド型業務DXサービスを提供するカミナシ(東京都千代田区)は、AIスタートアップのStatHack(東京都文京区)を買収。業務改善とAIという異なる強みを融合させ、より高度な現場ソリューションの提供を目指しています。これは単なる事業拡大ではなく、「機能融合による革新」という意味で、スタートアップの新たなM&Aの一例といえるでしょう。
IT業界におけるM&A急増の背景には、何があるのでしょうか。そして、M&Aの売り手・買い手となる企業は、採用や人材戦略の観点において、どのように考慮する必要があるのでしょうか。
M&Aで混乱する「現場」をどう守る?
M&Aが急増する背景には、経営の意思決定を大きく左右する3つの構造的な要因が関係しています。
(1)DX需要の加速
今や多くの業界において、IT技術の導入は事業継続や競争優位の確保に直結する重要なテーマとなっています。特にコロナ禍を契機に、リモートワーク、EC化、非接触の業務プロセスといったデジタル施策が一気に進み、あらゆる企業で急速なデジタル対応を求められるようになりました。その結果、DXは経営における最重要テーマの一つとして位置付けられています。
また、こうした流れの中で注目されているのが「内製化」の動きです。従来はSIerや外部ベンダーに委託していたシステム開発を、自社で担いたいというニーズが高まっています。これは単なるコスト削減やスピード向上のためではなく、「自社プロダクトを素早く改善し、顧客体験を磨き続けるには、開発の主導権を社内に持つべきだ」という考え方の浸透によるものだと考えられます。
しかし、社内でゼロからIT組織を立ち上げ、必要な人材を採用・育成するには、多くの時間とリスクが伴います。そこで注目されているのが、すでに強固な体制やノウハウを持つ企業をM&Aによって取り込むという戦略です。これは、内製化を実現するための近道として、有効な手段となっています。
(2)IT人材不足の深刻化
経済産業省の試算では、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足するとされています。特に、AI、データ分析、セキュリティ、UI/UXといった高度な専門性を持つ人材の需要は極めて高く、採用競争は激化しています。
多くの企業が「人材が不足しているが採用できない」「採用できても、育成に時間がかかる」という課題に直面している中、既にスキルを持ったエンジニアや開発組織ごと取り込めるM&Aは、スピーディーかつ確実性が高い人材確保の手段です。
(3)事業多角化(マルチプロダクト戦略)
変化の激しい時代において、一つのサービスや収益源に依存することは大きな経営リスクとなります。SaaS企業においても、主力プロダクトの成長が鈍化した際に、次の柱となる事業を持たなければ、企業全体の成長は頭打ちになってしまいます。
そこで注目されるのが、「マルチプロダクト戦略」です。M&Aを通じて新たな顧客層や技術、収益モデルを取り込むことで、事業ポートフォリオの強化とリスク分散を同時に図れます。実際に、BtoC領域で強みを持つ企業がBtoBのSaaS企業を買収することで、異なる市場に収益基盤を築き、より安定した事業運営を実現するケースも増えています。
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