急増するIT業界のM&A 混乱する現場でエンジニア離職を防ぐ3つの考え方(2/3 ページ)
2025年5月に発表された、アクセンチュアによるゆめみ(京都市)の買収は、IT業界におけるM&Aの動向を象徴する事例の一つとして注目を集めました。IT業界におけるM&A件数は過去10年で約3倍と急増しています。その背景には、何があるのでしょうか。
M&Aでエンジニアが離職、なぜ起きる?
M&Aは経営戦略として語られることが多いですが、組織の統合や事業方針の変化によって大きな影響を受けるのは「現場」です。特にエンジニアにとっては、仕事内容や評価、働き方が変わることによる不安やストレスが大きく、実際に離職につながるケースも少なくありません。
現場で起きやすいミスマッチとして多いのが、M&A後、被買収側のエンジニアが親会社の技術方針や開発環境に従わなければならないケースです。アジャイル開発やクラウドネイティブな環境に慣れたチームが、統合後にウォーターフォール開発やオンプレミス環境へ移行を迫られるといった「開発思想の違い」は、やりがいや仕事へのモチベーションに直結しやすく、離職の引き金になることも少なくありません。
評価制度のミスマッチも問題です。スタートアップでは成果主義やOKR、ピアレビューをベースにしたフラットな評価文化が主流です。一方、大手企業では職能等級制度や年功序列型の評価が色濃く残っている場合もあります。
スタートアップで根付いていた成果主義やピアレビュー文化が、大企業の職能等級制や年功序列に置き換わると、自分の貢献が正しく評価されないという感覚を持つケースも。評価基準や仕組みが変わることで、「自己効力感の喪失」にもつながることもあります。
意思決定のスピード感、リモート可否、雑談のしやすさなど、心理的安全性に直結する文化要素が大きく変わることも、定着率に影響を及ぼします。例えば、Slack中心のカルチャーがメール主体のコミュニケーションに変わるだけで、違和感を覚えることもあります。
制度の統合以上に重要なのは、現場の心理的安全性を担保する雰囲気設計や文化の橋渡しです。エンジニアが働きやすい環境をいかに維持・設計するかが、M&A成功のカギを握ります。
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