ウォークマンの時代から続いたJCBのポイント、「使いにくい」は変わるのか:「ポイント経済圏」定点観測(2/5 ページ)
クレジットカード業界初のポイントサービスとして1981年に始まったJCBの「Oki Dokiポイント」が、2026年1月に「J-POINT」へと全面リニューアルとなる。その狙いと課題は何なのか?
ポイント経済圏、3つの時代
J-POINTへのリニューアルについて理解するには、ポイント経済圏の歴史を振り返ると分かりやすい。消費者の行動の変化と技術の進歩が、ポイント経済圏の歴史を3つの時代に分ける鍵となっている。
・カタログギフト型の時代(1980年代〜2000年代前半)
最初は「カタログギフト型の時代」だ。JCBの「JOYJOYプレゼント」に象徴されるように、ポイントはカードごとに閉じた世界で、分厚いカタログから商品を選んで交換するのが主流だった。利用者は明細書に印刷された応募シールを丁寧に台紙に貼り、郵送で応募する。当時としては画期的なサービスだったが、今思えばかなり手間のかかる仕組みだった。
この時代のポイントは、あくまで「おまけ」の位置付けだった。カード会社が顧客向けに提供する特典であり、ポイント自体が経済活動の中心になることはなかった。
・ECでの直接利用の時代(2000年代〜2010年代前半)
転機となったのが、共通ポイントの登場である。2003年にTポイントが登場し、複数の企業が相乗りする共通ポイントという概念が生まれた。ポイントは単なる顧客サービスを超え、マーケティングツールとしても活用される時代になった。
そして、この分野で圧倒的な成功を収めたのが楽天だった。楽天は強力なECモールとクレジットカードのポイントを組み合わせることで、「独自の経済圏」を作り上げたのである。
従来のカタログギフト型では、集めたポイントを郵送して商品に変える必要があったが、楽天ポイントはECサイトでの支払いに直接充当できた。この利便性の差は決定的だった。楽天市場での買い物でポイントが貯まり、そのポイントで次の買い物ができる――このシンプルで分かりやすいサイクルが、楽天ポイントの隆盛につながったのである。
・スマホ決済の時代(2010年代後半〜現在)
そして第3の時代である現在は、「スマホ決済の時代」と言える。Tポイントがプラスチックカードを中心とした仕組みで、ネットとの親和性が低かったところに、スマートフォンのコード決済が登場した。この技術革新により、ネットと実店舗の両方をまとめて経済圏に取り込むことが可能になった。
この流れを決定づけたのがPayPayポイントだ。QRコード決済の普及とともに、「ポイントを貯め、それを利用してリアル店舗で買い物する」という体験が一般化した。コンビニエンスストアから飲食店まで、日常生活のあらゆる場面でポイントが「現金と同等のもの」として機能するようになったのである。
現在、PayPayポイントは若年層を中心に最も欲しいポイントの地位を獲得している。その背景には、リアル店舗での圧倒的な使いやすさがある。
この3つの時代を通じて見えてくるのは、「ポイントの使いやすさ」が競争の核心だということだ。カタログギフト型からECでの直接利用、そしてリアル店舗へ――ポイント経済圏は、より便利で、より身近な存在へと進化し続けてきたのである。
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