“燃え尽きる”日本の管理職 「これ以上頑張れない」をどう減らすのか(1/4 ページ)
意欲的に仕事に取り組んでいた人が、突然意欲を失い心身の疲労を感じる、燃え尽き症候群という状態。メンタルヘルス不調の一種である燃え尽き症候群の経験者が、世界中で増加している。
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燃え尽き症候群(バーンアウト)――。意欲的に仕事に取り組んでいた人が、突然意欲を失い、心身の疲労を感じる状態を指す。WHOは2019年、バーンアウトを国際疾病分類のうち「適切に管理されていない慢性的な職場ストレスに起因するもの」と定義した。メンタルヘルス不調の一種であるバーンアウト経験者が、世界中で増えている。
米国の求人掲示板および企業レビューサイトのGlassdoorによると、2025年第1四半期時点で「バーンアウト」という単語の出現数が、前年同期比の32%増加。コロナ禍前の2019年第4四半期と比べて50ポイントも高くなった。
Glassdoorの調査によれば、バーンアウトの発生率は転職活動と関係している。「バーンアウト」が記載されたレビューの多くには「高圧的な職場」「自己責任の文化」「土壇場での変更」「勤務時間外の業務」といった職場環境に起因するキーワードが目立つ他、「疲弊している」などの語句も増えているという。また、米医療保険大手シグナ・グループが2022年に実施した調査によると、Z世代の労働者の91%がストレスを訴え、99%がバーンアウトの兆候を示したそうだ。
なぜ、日本は管理職層が“燃え尽きる”のか
もちろん日本も例外ではない。Adecco Groupが2023年12月に発表した調査報告書「未来のグロハーバルワークフォース」によると、過去12カ月間にバーンアウトを経験した労働者の割合は各国平均で65%に上る。日本でも56%の労働者がバーンアウトを感じたと回答した。
バーンアウトはあらゆる世代に広がっているが、慶應義塾大学商学部の山本勲教授は、日本ではマネジメント層の発症リスクが高いとし、こう言及している。
「日本では、働き方改革の一環として長時間労働の是正が推進されていますが、その主な対象は一般社員です。労働時間をある程度自分の裁量で決められる管理職は、労働基準法の労働時間規定が適用されていないため、一般社員への残業規制のしわ寄せが及びやすい面があります。この事態が日本の管理職のバーンアウトにつながっていないか、企業としては留意する必要があるでしょう」(Adecco Group 2024年3月27日 「従業員のバーンアウトを防ぎ、ウェルビーイングを高め生産性の向上にいかにつなげるか」)
実際、働き方改革のしわ寄せが管理職に及んでいる。大手通信会社の人事担当者は「非管理職は労働時間把握が法的に義務化されており、労働基準監督署からも違法残業がないかをチェックされるが、管理職は労働時間の把握すらされていない。部下を残業させないようにして早く帰らせ、管理職がその分を背負って遅くまでやっている部署もある。管理職がちゃんと休息がとれているのかどうか分からないし、無理して働いている人が多いと思う」と語る。
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