“燃え尽きる”日本の管理職 「これ以上頑張れない」をどう減らすのか(2/4 ページ)
意欲的に仕事に取り組んでいた人が、突然意欲を失い心身の疲労を感じる、燃え尽き症候群という状態。メンタルヘルス不調の一種である燃え尽き症候群の経験者が、世界中で増加している。
バーンアウトにつながるメンタル不調
バーンアウトの前兆であるメンタルヘルス不調者は、日本でも増えている。厚生労働省が2024年6月28日に発表した「令和5年度過労死等の労災補償状況」によると、精神障害の請求件数は、コロナ前の2019年は2060件だったが、2023年は3575件(うち女性は1850件)に増加した。メンタル不調に陥っても請求に至らないケースも多く、発表された数字は氷山の一角にすぎない。
年代別では「40〜49歳」(953件)、「30〜39歳」(847件)、「50〜59歳」(795件)の順で多く、とくに40代以降は管理職層とも重なる。精神障害の原因となった出来事別の内訳を見ると、最も多かったのは「上司とのトラブルがあった」(599件)で、以下「上司などからパワーハラスメントを受けた」(289件)、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」(265件)と続く。その他、「1カ月に80時間以上の時間外労働を行った」「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った」「部下とのトラブルがあった」というケースもあった。
パワハラのように、上司と部下のトラブルからメンタル不調を発症するケースは少なくない。大手企業数社の産業医を務める内科医は「日本企業の管理職層はプレイングマネジャーが多いが、管理職になったときに部下をどう育成するかという研修をあまり受けていない人が多い。昔の先輩のやり方をそのまままねようとすると、若い世代との間でトラブルになりやすい。部下から『あの上司からこんなひどい目にあわされた』という相談を受けるケースも多いが、その中には中間管理職に関するものも含まれる」と指摘する。
日本企業の中間管理職である課長職は、9割以上がプレイングマネジャーであるといわれる。自らの業務に加え、部下育成や仕事の進捗状況の管理など、こなす業務も多い。
マイナビが2025年1月9日に発表した「管理職の悩みと実態調査」によると、管理職になって起きたネガティブな変化1位は「仕事の比重が増えた」(75.8%)で、以下「心身の健康が損なわれた」(68.9%)、「プライベートや家族との時間が楽しめなくなった」(55.4%)と続く。こうした状態が続けば、いずれはメンタル不調に陥り、バーンアウトに至る可能性は十分にある。
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