“燃え尽きる”日本の管理職 「これ以上頑張れない」をどう減らすのか(3/4 ページ)
意欲的に仕事に取り組んでいた人が、突然意欲を失い心身の疲労を感じる、燃え尽き症候群という状態。メンタルヘルス不調の一種である燃え尽き症候群の経験者が、世界中で増加している。
「職務不適応」という健康問題
加えて前出の産業医は、メンタル不調に陥る原因として業務命令による「職務不適応」があると指摘する。
「昔と違い、今は企業のビジネスモデルの変化が激しい。DXなどデジタル化の進展で事業内容が変わり、社員も新しい業務を命じられることが増えている。例えば、大学院で学んだ技術の延長で仕事をしてきた社員が、新しい分野の研究開発を命じられた結果、自分には無理だと悩み、鬱になってしまうケースも増えている。昔は営業から総務に異動しても何とか仕事はこなせたが、今は未知の分野も多く、職務不適応という健康問題が頻発している」
また、コロナ禍でテレワークや社内のデジタル化が加速。職場にいない部下とのコミュニケーションやデジタルツールを使った業務の進捗管理など、管理職のマネジメント方法も大きく変わりつつある。そうした負担も重なり、バーンアウトとおぼしき管理職が増加傾向にある。
建設関連会社の人事担当者は「必ずしも希望先に異動できるわけではないが、当社は期末に『異動希望』を申告可能だ。以前は20〜30代の異動希望が圧倒的に多かったが、最近は管理職からも出るようになった」と話す。「なぜ今さら?」と思い理由を聞くと「デジタル化についていけないので、違う部署に異動したい」と言われたそうだ。同社はペーパレスや業務のデジタル化を推進しているため「そんな部署はない」と突っぱねたそうだが、「新しい技術についていこうという気力を失っている人もいる」と指摘する。
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