「明治ブルガリアヨーグルト」は万博から生まれた 鳴かず飛ばずだった商品が国民的ヨーグルトに進化できた理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)
万博はビジネス創造の場としても機能している。例えば、回転寿司は1970年の大阪万博をきっかけに普及していった。明治ブルガリアヨーグルトも、同万博をきっかけに生まれた商品だ。
爆発的ヒットにつながった「きっかけ」とは?
当時の主流とは違ったため、1日に数百個しか売れない販売不振を打開する目的で、明治はスーパーやフルーツショップで試食販売を始めた。パッケージに砂糖の小袋を貼って売ったり、印象的なテレビCMを放映したり、さまざまな手段を講じた。
そうした活動が実り、徐々に販売が上向いてきた。ところが、ここで浮上したのがパッケージの問題だ。当時は牛乳と同じ容器で提供していたため、一度開けたらフタができない、中身が取り出しにくいといった問題が浮上した。この問題を解決するため、現行のフルオープンタイプのパッケージを開発、1981年にリニューアルした。
容器の刷新に加え、1980年代は食と健康の結び付きが認識として広まり、体に良い食品としてヨーグルトが注目されたのも追い風となった。さらに機能面の強化を図り、1996年には「明治ブルガリアヨーグルトLB81」が特定保健用食品に認可された。同商品の成功は、今日の「明治プロビオヨーグルトR-1」の爆発的ヒットにも繋がっている。
現在、明治ブルガリアヨーグルトは、ブルーベリーなどフルーツのフレーバーが入った商品に加えて多様なサイズの展開、ドリンクタイプの販売など、商品の多様化が進み、さまざまなニーズに応えている。
「プレーンは60代以上、フルーツ入りは30〜50代、個食用のパーソナルユースの小分けされた商品は20〜40代が主な購入層」と明治・発酵マーケティング部は明かす。
時代に合わせて実は「明治ブルガリアヨーグルトLB81」のパッケージは38回も変更されているそうだ。
2024年、約4700億円あるヨーグルト市場では、明治が約35%を占め、トップ企業となっている。そしてトップブランドはもちろん、780億円で約17%のシェアを持つ「明治ブルガリアヨーグルト」だ。24年連続でヨーグルトのトップシェアブランドとなっている。
近年はヨーグルト摂取による腸活が花粉症緩和に効果的な可能性があるということで、春先にヨーグルトが売れるのが恒例となっている。また、米価の急騰で、米を控えてパンに切り替える動きがあるが、それと共にヨーグルトの消費も増えている。今や、長寿商品となった「明治ブルガリアヨーグルト」だが、さらに売り上げを伸ばせる余地がある。
「日本では一般的ではないがヤギなどの乳を使ったヨーグルトも、ブルガリアにはある。スープに入れたり、サラダにかけたり、さまざまなヨーグルトを使った料理もあって、まだ直接食べるだけにとどまっている日本のヨーグルト文化は、進化する可能性を秘めている」(明治・発酵マーケティング部)
今般の大阪万博で、ブルガリアパビリオンがテーマに掲げたのは「バクテリア」。バイオテクノロジーをアピールするのは、いかにもヨーグルトの国らしい。明治も公式Webサイトで詳しく紹介するなど、協力を惜しまない。今も、明治とブルガリア政府は親密な関係にあり、明治のスタッフは乳酸菌の研究で頻繁に日本とブルガリアを行き来している。
2025大阪万博ブルガリア館、Daiwa Lease Co., Ltd. & Kobayashi Maki Design Workshop (KMDW) & BSMEPA(出所:EXPO2025公式Webサイト)
2024年10月には、ブルガリアの首都・ソフィアにて、ブルガリアの国営企業「LBブルガリカム社」と10年間の長期共同研究契約を締結。先端的なヨーグルトや乳酸菌の共同研究拠点の設立が決定した。
大阪万博のナショナルデーに合わせて来日したルメン・ラデフ大統領が東京で経済セミナーを開催した時には、明治の社員がスタッフとして参加するなど、両国の交流にも貢献している。
今回の万博からはどんなレガシーが生まれるのか、楽しみだ。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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