なぜラーメン二郎は信者を生むのか 支配と服従がもたらす“中毒性”の正体:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
ラーメン二郎府中店がXに投稿した「食事は20分以内」の“お願い”が話題になっている。「客を支配している」と批判する人もいるが、むしろ日本では今後そうした店舗が増えていくのではないか。その理由は……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
「こういう偉そうなところが“宗教みたい”と嫌われる理由なのに、なんで気付かないのかね」
「いやいや、ラーメン屋は回転率が命だし、そもそものんびりと食べるようなものじゃないだろ」
そんなふうに議論になっているのは、7月4日にラーメン二郎府中店が公式Xに投稿した次のような「お願い」からの「謝罪」騒動である。
「ラーメン二郎 府中店です。最近、極端にゆっくり食べている方が増えまして、ロット乱れたりお店としても困っています。お食事は『最大』で20分以内にお願いします。店主 SNS担当者」(出典:ラーメン二郎府中店のXアカウント@jiro_fuchu ※該当の投稿は現在削除済)
「ロット乱れるって何?」と首をかしげる人も多いだろうが、「ロット」とはラーメン二郎の店側が一度に調理できる麺の量のことだ。
ラーメン二郎では4〜5杯を同時に提供することが多いので、客側はこのペースに合わせて食べ終わると、客の回転がスムーズで待ち時間も短くなる。しかし、食べるのが遅い人がいると、この提供ペースが狂ってしまう。これはジロリアン(ラーメン二郎の熱狂的ファン)の間では「ロット乱し」と呼ばれ、罪深い行為の一つとされている。
店側としてはこの「4〜5杯を同時に提供する」オペレーションこそが、客が最もおいしく食べられるタイミングだという自負がある。そこで他の客のためにも、食べるのが遅い客にクギを刺したというワケだ。
これはジロリアンにとっては納得できる話かもしれないが、ラーメン二郎にそれほど思い入れのない人からすれば「なんで食べるペースまで指図されなくちゃいけないんだ」と叩く人も表れる。そんなふうに火の手が上がりはじめたところに、さらなる「燃料」が投下されてしまう。
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