2025年上半期「酪農業」倒産、4年ぶりゼロに 牛乳値上げが奏功
2025年上半期、酪農業の倒産件数は4年ぶりにゼロとなった。厳しい経営環境を乗り越え、増益企業も増加。経営努力と価格改定で再建の兆しがみえる一方、牛乳価格の上昇には依然課題も残る。
帝国データバンクが実施した「酪農業」の倒産動向調査によると、牛乳やチーズなどの原料となる生乳の生産を担う酪農業において、2025年上半期(1〜6月)の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は0件となった。これは4年ぶりのことで、過去10年で最多だった前年同期(3件)を大きく下回った。
2024年の倒産件数は年間で8件と、過去10年で最多を記録したが、2025年はそれを大幅に下回るペースで推移しており、過去最少となる可能性もある。
近年、酪農業はロシアによるウクライナ侵攻の影響などで飼料価格が高騰し、電気代や人件費といったコストも急上昇。生産すればするほど赤字になる厳しい採算状況が続き、経営を断念する酪農家が相次いだ。国産牛乳が不足する「酪農危機」に陥る懸念もあった。
しかし2025年には状況が一変し、酪農業者の経営には回復の兆しがみられている。2024年度決算が判明した酪農事業者の損益動向では、「赤字」の割合は26.3%と、2022年度(54.1%)をピークに減少傾向が続いている。
一方、「増益」となった事業者の割合は49.5%に達し、過去10年で2番目に高い水準となった。安定的に収益を確保できる見通しを立てた事業者が半数近くにのぼる。
背景には、人件費などの諸経費抑制に加え、輸入に頼っていた粗飼料を自家調達することで飼養コストを削減するなど、酪農事業者の経営努力がある。さらに、生乳の買い取り価格が2022年11月以降に複数回引き上げられたことも、厳しい経営環境の緩和につながった。加えて、家畜の排せつ物を活用したバイオマス発電への参入など、新たな事業に取り組む動きもみられた。
帝国データバンクは、「コメをはじめとする飲食料品全体の値上げが続くなかで、これ以上の牛乳の値上げが消費者に受け入れられるかは不透明だ。パック牛乳の価格(全国平均)は近年、大きく変動しておらず、値上げには慎重にならざるを得ない」と分析。「酪農の経営安定と持続的な発展をどう両立するか、酪農関係者の戦略が問われている」と指摘している。
調査は、負債1000万円以上かつ法的整理による倒産を対象に実施された。集計期間は2000年1月1日〜2025年6月30日。
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