職人の年収が低い──沖縄の伝統工芸の課題に、社員100人のIT会社はどう挑んだ?(5/5 ページ)
沖縄の伝統工芸の1つ「琉球紅型」は、職人の年収が低いという課題を抱えていた。この課題に、社員100人のIT会社が取り組んだという。
社員数は2倍近くまで急増
小渡氏が入社した2017年時点の社員数は65人ほどだったが、現在はその2倍近くの約115人。業界全体で不足感が叫ばれるITエンジニアの入社も多い。
もちろん、反対に転職していく人もいる。しかし、そこまで意に介していない。「同じ会社で一生を遂げるという感覚を持つ人が減り、転職マーケットも成熟しつつあります。だからこそ、採用力があることは企業として大きな強みになります。少なくとも、okicomにいる間に『良いキャリアが積めた』と思ってもらえる組織体であれば、また良い人材が入ってきてくれると思います」と小渡氏は前向きに語る。
マンパワーが増えたことで、できることの幅が広がり、本業への好循環も生まれている。例えば、この1月に新築移転した琉球大学病院から、資材運搬作業を省人化するロボットのシステム構築案件を受注。那覇空港の施設内に大型ビジョンを設置し、クライアントの広告映像を流す取り組みも始めた。医療や広告はokicomの長い歴史の中でも関わりの少なかった領域だといい、人材の拡大が業容の拡大に直結している。
沖縄DXプロジェクトを通して企業価値を高め、人材が集まり、対応できる領域が広がり、新たなビジネスチャンスが生まれる。正に、お手本のような「サステナビリティ経営」だ。
インプットの量が、多彩なビジネスを生み出す礎に
小渡氏いわく、新たな事業モデルを生む思考回路を支えているのは、膨大な「インプットの量」だという。
「okicomの役員だけでなく、金融機関の役員に就かせてもらったり、中小企業の海外展開支援もさせてもらったりしていて、自分の中の世界観が一つだけに限定されていません。インプットの量にとても恵まれているので、何か一つの課題を把握すると、それが別の人や業界、地域にも通じるような一般化した考え方もできます。交友関係でもいろんな分野の方がいるので、何か新しいことをするときに協力してもらえるネットワークがあるのは大きな財産ですね」
若きリーダーの下、サステナビリティの要素をまとった「おもしろいことへのチャレンジ」が加速しているokicom。小さな“離島県”から、次はどんな斬新な事業モデルを生み出すのか。注目だ。
【お詫びと訂正:2025年7月15日午後2時45分、記事タイトルを一部修正いたしました。お詫びして訂正いたします。】
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