人口5000人の町に年間24万人――「朝ドラ特需」に沸くやなせたかしの故郷、渋滞・長蛇の列をどう制御した?(2/5 ページ)
朝ドラ「あんぱん」で注目を集める高知県のやなせたかし記念館。年間来場者数が約24万人に達した年もある一方で、多くの来館者による課題も浮かび上がってきた。地域と観光の両立を目指し、施設が行っている工夫とは?
オープンから49日で、来場者数の目標を達成
高知市内から北東に約30キロ。香美市に入り、途中から物部川に沿って進んでいくと、やなせたかし記念館に到着する。案内板がなければ見過ごしてしまいそうなほど、主張することなく、ひっそりとたたずんでいる。
やなせたかし記念館が開館したのは1996年7月。当初、地元の自治体が町の総合文化会館を建設し、そこに名誉町民であったやなせ氏の作品を展示する計画を立てていた。そこに、やなせ氏から多額の寄付が行われ、全作品を寄贈するという申し出があったのだ。これを受けて方針を変更し、文化会館ではなく、やなせ氏自身の記念館を建てることとなった。建設にあたっては、やなせ氏も施設全体のプロデューサーのような関わり方をしている。
開館に際して、やなせ氏は「人口5000人の町なので、年間10万人を集められる観光施設になればうれしい」とコメントした。ところが、期待を良い意味で大きく裏切り、開館からわずか49日で目標の10万人を達成したのである。
さらに、翌1997年の年間入館者数は約23万人に上り、高知を舞台にした大河ドラマ「龍馬伝」が放送された2010年には約24万人を記録した。その後も15万人前後で推移し、高知県を代表する観光スポットとして定着している。
やなせたかし記念館の運営元である、やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団で事務局長を務める仙波美由記さんは、同館はあくまでも「美術館」であることを強調する。
「アンパンマンこどもミュージアムとは協力関係にあります。ただ、あちらはアンパンマン関連商品を扱う企業が中心となった共同事業体によって運営されており、商品展開を促進することを目的として始まった施設です。一方で、当館は財団が所蔵するやなせの自筆の原画・原稿を展示し、大人の方でも楽しめる美術館です。そういったすみ分けができています」(仙波さん)
仙波さんは2003年からやなせたかし記念館で働く。元々は展覧会の企画などに携わるために学芸員として財団に入った。現在も事務局長としての業務をこなしつつ、学芸員として作品の展示などにも関わっている。
では、美術館としてどのような運用がなされているのだろうか。アンパンマンミュージアムでは、当然アンパンマンに関する作品展示が中心。一方、詩とメルヘン絵本館は、やなせ氏がサンリオと取り組み、責任編集長を務めた雑誌『詩とメルヘン』での仕事を紹介している。実はこの雑誌を知らなかったという来場者も少なくないそうだ。
「美術館として、年間4回は企画展を実施しています。本館であるアンパンマンミュージアムも、アンパンマンに限定したものでありながら所蔵品はかなりの数があり、定期的に展示替えを行っています」と仙波さんは力を込める。
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