「日産の町」「マツダの町」はもう生まれない? 企業城下町が成立しなくなった理由:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
台湾の半導体企業TSMCが熊本県菊陽町に工場をつくり「企業城下町モデル」ができているが、今後そのような成功事例が日本にできるかというと、難しいのではないか。その理由は……。
海外の売り上げ比率が高い日本の自動車メーカー
例えば、日産の2024年のグローバル販売台数は334万6000台。そのうち日本で売れたのは46万1000台で、全体のわずか14%にすぎない。つまり、日産という日本のものづくり企業を支えているのは国内市場ではなく、販売台数の86%を占めている海外市場なのだ。
日産が「経営危機」と報じられたとき、「最近の日産には魅力的な車がないから当然だ」といった声もあがった。だが、経営が傾いた主な理由はそこではない。実は、売り上げの86%を占める海外事業、特に北米市場で利益が出なくなってしまったことが大きな原因だった。
誤解を恐れずに言ってしまうと、日産の経営危機は、日本国内の販売動向やら自動車愛好家の“思い”などとはほとんど関係がない話なのだ。
ちなみに、このような傾向は日産だけではなく、トヨタもホンダも似たようなものだ。トヨタグループの2024年全世界販売台数は1082万台。そのうち日本で売れたのは144万台で全体の13%である。
このように海外が「主戦場」ならば当然、開発やマーケティングだけではなく、生産も海外で行ったほうがいい。自国で生産した製品を他国に輸出して販売するのは、コストもかかるし、時間もかかる。今回の「トランプ関税」のように政治や地域紛争で大打撃を受けることもある。
その結果、日産は全世界に17の車両工場をつくることとなった。では、その中で日本に車両工場はいくつあるのかというと、追浜、横浜、いわき、栃木の4つである。
日産が飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している会社ならば何も問題はないが、“稼げない体質”に陥り2万人のリストラを断行している会社ならば、「全体の14%しか車が売れない地域にこれほどの生産体制が必要なのか」となるのは当然であろう。しかも、日本はこれからさらなる人口減少で、地方の工場で働く人材の確保も、ますます難しくなっていくのである。
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