「日産の町」「マツダの町」はもう生まれない？ 企業城下町が成立しなくなった理由：スピン経済の歩き方（2/5 ページ）

台湾の半導体企業TSMCが熊本県菊陽町に工場をつくり「企業城下町モデル」ができているが、今後そのような成功事例が日本にできるかというと、難しいのではないか。その理由は……。

[窪田順生，ITmedia]

労働者の激減がもたらすもの

　経済産業省によれば、国内製造業の事業所数は1989年に42.2万もあったが、2016年に19.1万へ半減した。そして経済センサスによると、2021年6月には17万6858事業所にまで落ち込んでいる。

平成以降の製造事業所数と1事業所当たり付加価値額の推移（出典：経済産業省）

　なぜこんなことになってしまうのか。「政治が悪い」「消費税が悪い」など、さまざまな見方があるだろうが、こういう事態を引き起こしている元凶は「人口減少」である。

　42万の工場が存在した1989年、工場労働者のベースとなる生産年齢人口（15〜64歳）は約8600万人で総人口の約7割を占めていた。しかし、令和の今は7395万人で総人口の6割を切っている。

　ここまで労働者が激減すれば、工場も激減するのは当然だ。もちろん、この間に工場の機械化も進んでいるが、機械を導入しても人手がまったく不要になるわけではない。機械を操作する者、ちゃんと生産できているのか確認する者など、ある程度の工場労働者は必要になる。

　加えて、労働者が激減するということは、消費者も激減するということだ。つまり、工場でつくったものが国内市場で売れなくなるので、競争力のあるものづくり企業ほど、生き残りを図るために海外へと拠点を移していく。

　その代表が自動車産業である。