セブンの棚を制した“宇宙人ビール” 1本350円でも、いきなり売れたワケ:ササる“数字”のつくり方(1/4 ページ)
350円のビール「有頂天エイリアンズ」がセブンに登場し、予想外の売れ行きを見せている。高価格でもヒットした理由とは?
ササる”数字”のつくり方:
ビジネスモデルや話題の商品を支えるのは、“なんとなくの勘”ではなく、「数字」がひそかに物語る場面がある。価格のつけ方、ネーミング、ターゲットの絞り方、販促の立ち上げ──。本連載では、注目の企業や商品などが、どんな数値的思考で設計されたのか。現場の担当者に話を聞きながら、その「ササり方」を探っていく。
エイリアン(宇宙人)といえば? この質問に対し、映画やゲームなどに登場するキャラクターを想像した人が多いかもしれないが、ちょっと変わったビールがセブン-イレブンの売り場に並び、静かにヒットしている。その名は「有頂天エイリアンズ」。
何とも奇妙なネーミングだが、中身はれっきとしたクラフトビールである。ヤッホーブルーイングとセブン-イレブン・ジャパンが共同開発したもので、2025年5月21日に発売。セブンのプレミアムビールカテゴリにおいて、発売から4週連続で売り上げ1位を記録するなど、順調なスタートを切っている。
一般的なビールは、透明ですっきりとした飲み口で、苦みがやや強く、香りは穏やかなものが多い。しかし、有頂天エイリアンズの見た目は濁っており、口あたりはまろやか。苦みは控えめで、南国のフルーツのようなトロピカルな香りが広がる。ビールには「ラガー」「エール」などの種類があるが、新商品は「ヘイジーIPA」というジャンルに分類される。
聞き慣れない種類かもしれないが、ヤッホーブルーイングの看板商品「よなよなエール」と比べてホップの使用量が約1.8倍。香りの成分に至っては、一般的なラガービールの約11倍だという。香りや味わいが強いのにも、それなりに理由があるというわけだ。
(※)GC-MS装置で、ホップ由来の香気成分であるリナロール・グラニオールの含有量を測定し、一般的なラガービールの文献値と比較。
価格は350円。コンビニで売られているビールとしては高めであるが、ヘイジーIPAの相場から見れば安い。専門店で販売しているヘイジーIPAを見ると、1本500〜700円のものも珍しくないからだ。
とはいえ、コンビニで300円を超えるビールは、さすがに高い。ビール業界では「300円の壁」と呼ばれる価格の分岐点があり、1本300円を超えると手に取られにくくなり、販売数が伸びづらくなると言われている。そのため、社内からは「本当に売れるのか」という不安の声も出ていた。
こうした懸念を払しょくするために、開発チームはどのような手を打ったのか。試飲調査である。300円台のものと200円台のものを用意し、飲み比べてもらった。結果、「高いほうがおいしい」「満足感がある」といった声が多く、最終的に350円での販売に踏み切ったのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なぜ若い人は「黒ラベル」を選ぶのか サッポロの“1人2杯まで”の店が示した、お客の行動変化
「若者のビール離れ」が叫ばれて久しいが、サッポロビールの「黒ラベル」が好調のようだ。歴史があるブランドなのに、なぜ若い人たちに支持されているのか。そのヒントは、東京・銀座の店にあって……。
ドンキ「152円ビール」じわり人気 “地味過ぎる”見た目になった深いワケ
ドンキのPBビール「ド」シリーズがじわじわ売れている。モノクロのシンプルなデザインと1本152円の低価格で、若年層やライトユーザーを中心に支持を広げているようだ。
わずか4分で1億円を突破! 飲めるのは「20年後」なのに、なぜキリンのウイスキーは“即完”したのか
発売からわずか4分で1億円を突破し、即日完売したキリンのウイスキー。その実物が届くのは20年後という“異例の設計”には、ある開発者の想いと、緻密な仕掛けがあった──。
ウイスキー蒸溜所「1万円ツアー」が盛況 サントリーが強気の値付けでも、満席が続く理由
サントリーのウイスキー蒸溜所が盛況である。大阪の山崎と山梨の白州にそれぞれ蒸溜所があるが、いずれも来客数が増えている。その理由を取材したところ、気になるツアーが盛り上がっているという。それは……。


