AIと働くと「孤独になる」――Z世代の9割が感じる“職場のつながり不足”
AIを業務に取り入れるナレッジワーカー(知識労働者)が増加する一方で、職場でのAI活用が進むことで孤独感が高まり、より深い人間的なつながりを求める声が強まっている。
AIを業務に取り入れるナレッジワーカー(知識労働者)が増加する一方で、職場でのAI活用が進むことで孤独感が高まり、より深い人間的なつながりを求める声が強まっている。これは、デザイン・印刷サービス企業である英Moo社が7月24日に発表したレポートで明らかになった。
AI導入が進むと、孤立感が強くなる……?
同調査によれば、ナレッジワーカーの約79%が「職場で孤立している」と感じており、若年層においてその傾向はさらに顕著である。Z世代の労働者の89%、ミレニアル世代では82%が孤独感を訴えている。また、業務でAIの使用を促されている従業員の84%が孤独を感じていることから、AIの導入と孤立感の間に関連性がある可能性が示唆されている。
Moo社の最高プロダクト・テクノロジー責任者であるクレア・ドナルド氏は声明の中で「AIは働き方を変革し、業務の自動化を進めているが、組織が健全に成長するために不可欠なのは、人とのつながり、創造性、そして企業文化である」と述べている。「企業が新たなツールを導入する際には、日常的な対面での打ち合わせやチーム間の協働機会など、人間同士の交流を重視すべきである」と同氏は強調する。
米国のナレッジワーカー1000人を対象に実施した調査では、65%が「AIに認知的作業をアウトソースしている=同僚よりもAIツールに頼る」と回答。特にミレニアル世代がその傾向をリードしており、71%が「まずAIに相談する」と答えているのに対し、ベビーブーマー世代とZ世代ではそれぞれ半数にとどまっている。
一方で、AI導入に対して否定的な声も少なくない。ナレッジワーカーの62%が職場でAIの活用を推奨されていると回答しているが、28%は「AIに依存する同僚に対していら立ちを感じる」と述べている。
また、AI活用が進む中で、60%のナレッジワーカーが「AIが一部の同僚の仕事を代替する可能性がある」と考えている。しかし、Moo社のレポートによれば、職場の人間関係や企業文化はその影響を受ける可能性があり、孤独を感じている従業員ほど、自社のカルチャーを「ストレスが多い」「圧倒される」と否定的に捉える傾向が強いという。
このような状況に対し「適切なオンボーディング(入社時研修・導入支援)が重要である」と同レポートは指摘する。ナレッジワーカーのうち、入社時に十分なオンボーディングを受けたと感じているのはわずか半数にとどまり、残りの半数は「業績評価基準や企業文化、価値観が不明確だった」と回答。Moo社は、メンターの割り当てやピアサポート(同僚による支援)の導入が、職場での孤独感の軽減やオンボーディングの効果向上につながると提言している。
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