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チャットbotに恋する社員も!? AI時代に企業が直面するかもしれない、3つの”人事リスク”

職場での生産性向上をもたらすとの期待と、労働者の雇用を奪うかもしれないという懸念の両方が語られてきたAIだが、最近ではそれとは別の側面も明らかになりつつある。HR Diveは、職場におけるコンプライアンスとAIの今後について取材した。

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HR Dive

 職場での生産性向上をもたらすとの期待と、労働者の雇用を奪うかもしれないという懸念の両方が語られてきたAIだが、最近ではそれとは別の側面も明らかになりつつある。人々がAIと新しく、時には不穏な関わり方をし始めている、という点だ。HR Diveは、法律事務所Fisher Phillips(フィッシャー・フィリップス)のパートナーであるマイケル・エルコン氏に、職場におけるコンプライアンスとAIの今後について話を聞いた。

AIが職場にもたらす3つの厄介事

 インターネットが1990年代半ばから後半にかけて一般化した際、企業はその効率性に驚嘆した。一方で「インターネットにはポルノがある」という事実に人々が気付くのも時間の問題だったとエルコン氏は語る。

 突如として、性的に露骨な画像や動画が簡単に入手できるようになり、それらを他者に送信・共有することも容易になった。こうした共有行為は、米国公民権法第7編(Title VII)に基づくセクハラ訴訟にも発展した。

 エルコン氏は、最近スペインで発生した、10代の少年がクラスメートの裸画像をディープフェイクで生成した事件を例に挙げた。これを職場の同僚に対して行う事態は、そう遠くない未来に起き得ると警告する。「こうした衝撃的な事例は、いずれ職場にも持ち込まれる」(エルコン氏)

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提供:ゲッティイメージズ

AIに過剰な愛着を持つ従業員

 最近、米ニュージャージー州の男性がAIチャットbotに恋をし、すでに妻と2歳の子どもがいるにもかかわらずプロポーズしたというニュースが話題になった。これはSF映画の筋書きではなく、実際に人々がAIに不健全ともいえる愛着を持つケースが表れており、その一部は職場で発生しているとエルコン氏は指摘する。

 同氏は今夏、全米人事管理協会(SHRM)2025年会議のセッションで臨床心理士である妻のアンドレア氏とともにこのテーマについて講演した。その質疑応答の場で、ある人事責任者が「自社でも元従業員による同様の事例があった」と発言したという。

 「若い世代は日常的にAIを使っており、孤独感を和らげる感情的な用途にも利用している。そして、そのAIが職場に導入されると、それが職場課題として顕在化する可能性がある」とエルコン氏は述べ、「これは向き合うべきテーマになる」と強調した。

AIを合理的配慮として求める従業員

 従業員が業務遂行や感情的サポートのためにAIに慣れ、場合によっては依存するようになると、「AIを活用した合理的配慮を求める声が増える可能性がある」とエルコン氏は指摘する。

 AIはアクセシビリティーの面で大きな変化をもたらす可能性が高く、雇用主は業務効率化だけでなく、従業員が業務を遂行しやすくするためのツール導入要請に直面するだろう。従来の配慮要請と同様、例えば不安障害や自閉症の従業員が、感情的・社会的サポートを得るために常時チャットボットへのアクセスを求めるといったケースも想定される。

 こうした新しい課題に対しても、まずは基本に立ち返ることが重要だと同氏は述べる。すなわち、要請があった場合は「対話型プロセス」を通じて配慮内容を決定するという原則だ。裁判所にはすでにフレームワークが存在し、AIはその分析に関わる「新たな技術」にすぎない。一方で、AIとの「擬似恋愛関係」のような新しい現象については、まだ確立された指針はない。

 「私たちは多くの新しい事態の入り口に立っている。あらゆる技術革新と同じように、何が正しく、何が間違った使い方なのか、人々はこれから見極めていく必要がある」とエルコン氏は語った。

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