排外主義の根底にある「貧困」――日本ペンクラブ、炎上覚悟で発した声明の意図は 桐野夏生会長に聞く(2/3 ページ)
デマと排外主義が選挙を覆う今、日本ペンクラブは「炎上覚悟」で声明を発出した。桐野夏生会長が語る、社会を壊す力学と表現の自由の危機。
排外主義の根底にある「貧困」
――記者会見で、排外主義が台頭する要因として「貧困」を挙げていたが、この点について説明してほしい。
人々の間に、抑圧されているという感覚が強くなっているように感じる。その不満のはけ口が女性や外国人といった弱い立場のところへ向かい、噴出する力学が働いているのではないか。
排外主義的な主張の根拠は、自分たちが苦しんでいるのに外国人が優遇されている、外国人が権利を乱用しているといったものであり、そのほとんどがきちんとファクトチェックを行えば誤りであることが分かる、フェイクやデマに類するものだ。それを検証している人たちもいるが、追い付かない状況の中でSNS特有の瞬発的、扇情的な情報拡散によって、皆が誤情報を信じてしまう。
――声明を出しても、SNSを主な情報源としている若い世代にはその声が届いていないかもしれない。
そうかもしれない。われわれはまさに混迷と分断の時代を生きている。また、作家といっても昔のように世論を左右するほどの影響力があるわけではない。それでも言葉を使って仕事をしている人たちの総意で声を上げていくという営みは、守るべきものと信じている。
――伝統的なペンの力が弱まっていると感じる。ペンクラブとしてのSNS社会への対応は?
伝統的なペンの力というのが作家としての文筆活動を指すならば、われわれは言葉を選び、練りながら文章を書き、その先に編集者の目があり、ようやく1つの作品をつくりあげ、世に送り出す。こうしたプロセスを通した言葉は瞬発的な言葉とは種類がまったく異なるし、重みがある。こうした言葉はスピードが遅く、その面でSNSに敵わないが、それでも声を上げ続けなければならない。表現の自由は、手をこまねいていればすぐにでも奪われてしまう危ういものだからだ。
とはいえ、SNS対策を何もしていないわけではない。若い人たちにもわれわれと一緒に活動してほしいという思いがあり、日本ペンクラブとしてSNSアカウントを持つほか、言論表現委員会、女性作家委員会など各委員会においても、SNSの情報発信に力を入れるようになってきている。
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