キヤノンMJは、どのように「商談プロセスの7割をデジタル化」したのか:後編(2/2 ページ)
キヤノンMJでは、商談プロセスの約7割をデジタル上で完結する仕組み作りに挑戦しているというが、具体的にどのような取り組みをしているのだろう。
キヤノンMJの「強い営業力」を他社にも展開していく
藤島氏: 営業のデジタル化については、キヤノンMJ社内だけでなく、外販も狙っていくとのことですが、今後の展開について教えてください。
林氏: 商談プロセスのデジタル化は、確かにまだ発展途上の市場領域だと思います。特に経験豊富な営業担当者は、従来の手法で十分な成果を上げているケースが多い。一方で、新しく営業に配属された方や、より効率的な営業手法を身に付けたい方にとっては有効な手法です。
当社は、強い営業組織で培ってきた「顧客とどのように関係を構築し、情報提供していくべきか」のノウハウを持っています。このノウハウを、デジタルセールスルームとセットで提供し、多くの企業さまの営業DXを支援していきたいと考えています。
林氏: openpageとは人材交流も積極的に図っています。双方で主力メンバーを常駐させ合って、当社のメンバーもopenpageのTシャツを着て一緒に展示会で営業活動をしています。一方でopenpageからは、キヤノンMJのオフィスで営業DX推進の支援をしてもらっています。お互いに新しい風を入れて柔軟に変わろうとしている──そんな関係性だと思います。
自社で新しいセールステックを実験的に取り入れ、国内のセールステックベンチャー企業との連携を強化していく。さまざまなパートナーのご支援をいただきながら、営業DXのモデルケースを作り、セールステックのノウハウと共に市場に展開する戦略です。
藤島氏: キヤノンMJは、対面中心の従来型営業の人員が減少していくと予想される中で、デジタルを織り交ぜた生産性の高い新しい商談プロセスを模索されています。セールステックに投資し、全社的に取り組みを進め、さらに顧客への提案も行うという包括的な取り組みをする大手企業は他にはなく、かなり先駆的な存在だと思います。
多くの企業がこのアプローチを参考にしていくでしょうし、私は日本の大手企業における営業DXのトップランナーになると確信しています。
林氏: 当社もまだ道半ばですが、顧客も営業も同じ画面を見ながら対話できる営業のデジタル接点作りは、徐々に進みつつあります。次のステップとして、生成AIを活用した支援や、デジタルセールスのためのコンテンツ作成支援にも取り組んでいきたいと考えています。
まとめ
さらなる人口減を見据え、営業活動や商談プロセスの変革はもはや待ったなしの状況だ。キヤノンMJが描く営業DXの未来像は、人口減少社会における新しい働き方のモデルケースとして、多くの企業が注目する取り組みとなるだろう。
筆者プロフィール:藤島誓也 株式会社openpage代表取締役
2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。2024年にはキヤノンマーケティングジャパン株式会社と資本提携を行い、国内大手企業のデジタルセールス戦略推進を支援している。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。
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