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アニメ制作市場、過去最高を更新 話題作が多い一方、続く「利益なき繁忙」帝国データバンク調べ(2/2 ページ)

アニメ制作市場が好調に推移している。帝国データバンクが調査を実施した。

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好調のアニメ制作市場、今後の動向は?

 直接制作を受託・完成させる能力を持つ「元請・グロス請」の2024年の平均売上高は27億4900万円。前年(25億6300万円)を上回って4年連続の増加となり、過去最高を更新した。業績動向では、「増収」(45.1%)、「減収」(26.5%)、「前年並み」(28.4%)となった。

 損益面では、「増益」(40.0%)、「減益」(25.5%)、「赤字」(34.5%)となり、赤字と減益を合わせた「業績悪化」の割合が6割を占めた。売上高の伸びを上回る制作コスト高に直面し、収益力が大幅に悪化した。

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元請・グロス請の動向

 下請けとしてアニメ制作に携わる「専門スタジオ」の2024年の平均売上高は4億3800万円で、4年連続で前年を上回った。業績動向では「増収」(32.8%)、「減収」(17.8%)、「前年並み」(49.4%)となった。損益面では「増益」(45.6%)が2018年(46.8%)に次ぐ高さとなり、「赤字」(33.3%)は前年から9.2ポイント低下した。

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専門スタジオ(下請)の動向

今後の展開

 2025年も引き続きアニメ制作の引き合いが強く、制作市場全体の活況状態は維持されるものと見られる。現状の業績ペースで推移した場合、2025年の市場は2024年を上回ることが予想され、制作市場として初となる4000億円への到達も想定される。

 市場規模は過去最高を更新し続ける一方、制作会社では売上高の増収ペースを上回る制作コストの高騰や人件費の増加、人材不足に伴う制作遅延といった状態が鮮明だ。コスト増を価格へ転嫁できない、「利益なき繁忙」状態へ陥りつつある。また、低賃金で従事するアニメーターや過度な長期労働、不公正な請負関係、クリエーターの知的財産権侵害など、長年にわたる業界全体の課題が国内外から指摘されるケースも目立つ。

 帝国データバンクは「2020年代後半のアニメ制作業界は、日本アニメがインターネット配信などを通じてグローバルコンテンツ化が進む中、労働環境の適正化やクオリティー維持、将来世代への技術継承といった課題に対し、どう対応するかが焦点となる」とコメントした。

 信用調査報告書ファイル「CCR」(200万社収録)や外部情報を基に集計・分析した。

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