残業時間が月50時間→5時間に シャツメーカーが脱・タイムカードの先に見据えるもの(3/5 ページ)
紙のタイムカードによる手作業での勤怠管理に、限界を感じる企業は多い。そんな中、日本製シャツを製造・販売するメーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)は、勤怠管理のデジタル化に踏み切り、業務削減を実現した。同社にデジタル化の道のりと成果について聞いた。
接客業務にもプラスの効果
2020年5月の導入開始から約半年の移行期間を経て、同社の勤怠管理は劇的に変化した。大出氏がまず挙げたのは、業務の分散化だ。「従来は15日締め後に一気に大量の作業が発生していましたが、現在はリアルタイムで勤怠の状況を確認できます。そのため、申請の即座承認やエラーの早期発見が可能になり、作業が月全体に分散されました」(大出氏)
これにより、経理の締めを月末から22日に前倒しできた。給与計算もスムーズかつ余裕を持って進められるようになったため、ミスも激減したという。
残業時間も大幅に削減された。システム導入前は月50時間に及んでいた残業時間が、現在では月5時間未満にまで削減。さらに、所定労働時間が8時間から7時間へと短縮されたうえ、月に2日はあった休日出勤も完全になくなった。
店舗側でも変化が生まれた。以前は有給休暇の申請書類を上長がFAXで本部に送信し、本部で一人一人の情報をExcel入力しながら残日数の確認をする必要があった。システム導入後は、クラウドシステムを通じて各自が簡単に有給休暇の申請ができ、承認後はリアルタイムで残日数が反映される。店舗の雑務が削減され、接客業務に集中できる環境づくりにも効果が見られたという。
導入がスムーズに進んだ背景には、各店舗のマネジャーによるフォローもあったという。「例えば、スタッフがユーザー登録でつまずいた場合は、マネジャーが店舗で直接サポートしてくれました。本社からマネジャーにそういった指示を出したのではありません。どのマネジャーも、自主的に動いてくれたので驚きましたね」(大出氏)
勤怠管理の効率化により、大出氏自身の役割も変化しているという。これまでは実務に追われ、過去の数字の分析がメインだったが、現在は将来を見据えた戦略的な分析に時間を割けるようになった。今後は、勤怠データを投資判断や経営企画にも活用していく方針だ。
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