倒産リスク企業12万8000社超 淘汰が進む中小企業の現実
帝国データバンクによると、倒産リスクが高い企業は2025年6月時点で12万8000社超に拡大。特に製造・建設業が増加し、小規模企業に集中する。淘汰の動きが鮮明となり、中小企業の経営環境は一段と厳しさを増している。
帝国データバンクは、企業が1年以内に倒産する確率を10段階のグレードで示す指標「倒産予測値」のデータを基に、今後の「リスク動向」を調査した。倒産予測値が高い企業(グレード8〜10)は、2025年6月時点で全体の8.7%にあたる12万8552社となり、2024年12月と比べ1592社増加した。厳しい経営環境に対応できない企業でリスク顕在化が進んでいる。
業種別では「製造業」が最多で3万3465社、2024年12月と比べ4894社増加した。次に「建設業」が3万20社(同1203社増)と2番目に多かった。
一方で、高リスク企業数が最も減少したのは「小売業」で2万4050社(2414社減)。次いで「運輸・通信業」が1万359社(1704社減)となった。
業種を詳細にみると、高リスク企業数が最も多いのは「職別工事業」(1万4510社)、次いで「総合工事業」(1万1892社)で、建設業が上位2業種を占めた。以下は「運輸業」(1万164社)などが続いた。
業種内の全企業に占める高リスク企業の割合(出現率)では、「出版・印刷・同関連産業」が41.0%で最多。「飲食店」が38.3%、「皮革・同製品・毛皮製造業」が37.6%と続き、全体平均(8.7%)の4倍以上となった。
高リスク企業数が減少した業種
業種大分類別で減少が目立ったのは「運輸業」で1664社減(1万1828社→1万164社)。「飲食料品小売業」は1354社減(9159社→7805社)、「飲食店」は1345社減(1万134社→8789社)だった。
倒産リスクの高い企業が市場から退場したことが要因のひとつとみられる。2025年上半期に倒産した企業のうち、2024年12月時点で高リスクに分類されていた企業の割合は全体で41.0%。これに対し「運輸業」は73.3%、「飲食料品小売業」は76.6%、「飲食店」は69.2%と高水準で、市場淘汰が進んでいることが分かった。
売上高・従業員数別にみると
売上高別では「1億円未満」が8万2491社(構成比64.2%)で最多。「1〜10億円未満」が4万1588社(同32.4%)で、「10億円未満」の企業が全体の96.6%を占めた。一方、「50億円以上」でも435社が高リスクに分類された。
従業員数別では「5人未満」が8万1352社(同63.3%)と最多で、「5〜10人未満」が2万1035社(同16.4%)と続き、小規模企業に集中していることが明らかになった。
帝国データバンクは、米国との相互関税15%の影響、コロナ借換保証の返済本格化、物価高、人手不足などから「当面は経営環境の好転は乏しい」と指摘。さらに「リスクが複合的に作用し、中小企業の倒産リスクは一段と高まる可能性がある。早期段階で事業再生支援や外部専門家を活用することが、持続的な経営の実現に向けた重要な戦略になる」と警鐘を鳴らした。
倒産予測値とは、今後1年以内に倒産する確率を個別企業ごとに算出したリスク指標。帝国データバンクは現地調査や独自ネットワークの変動情報などを基に、倒産に関係の深い要素を抽出し統計モデルで算出している。リスクはG1〜G10の10段階で示され、G1が最も低く、G10が最も高い。
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