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なぜミツカンは謝ったのか? 「女性蔑視」批判をスルーできなかった、オトナの事情スピン経済の歩き方(1/7 ページ)

SNSで冷やし中華の投稿が炎上したミツカンが、謝罪によりさらに炎上している。ミツカンはなぜ謝罪をしたのか。同社が守りたかったものや、背景にある事情とは……。

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スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。

 SNSの投稿が炎上したので「不快な思いをさせてすみません」と謝罪したところ「理不尽な言いがかりを真に受けていちいち頭下げんなよ」と再び炎上……。そんな調子でネット民から“往復ビンタ”をくらっているのが、ミツカンだ。


ミツカンの「冷やし中華のつゆ」(出典:ミツカンホールディングスのプレスリリース)

 ご存じない方のために、経緯を簡単に説明しよう。発端は8月13日、ミツカンの公式Xが「冷やし中華なんてこれだけでも充分美味しいです」という文言とともに、同社の「冷やし中華のつゆ」だけを中華麺にかけた写真を投稿したことだった。これが一部のSNSユーザーから「主婦の努力をあざ笑っている」「女性蔑視」などとボロカスに叩かれてしまったのである。

 「は? なんで?」と口がポカンと開いてしまった人も多いだろう。実はこの投稿自体が問題ではない。ちょうど間の悪いことに、SNS上では「料理の負担」を巡る論争が起きていたのだ。

 「調理は重労働」と訴える人々は、「何を食べたい?」という問いかけに対して「今日は簡単にそうめんでいいよ」などと答える人は、この酷暑の中で湯を沸かして、そうめんを茹(ゆ)でて、ザルにあげて流水で洗うなどの大変さを分かっていない――などと主張していた。

 そんなところに、ミツカンが「麺を茹でてつゆをかけるだけ」というレシピを発表したため、結果的にその声を揶揄(やゆ)・挑発するような形になってしまった。これをきっかけに「もうミツカン製品は買わない」「家にあるミツカン製品を全部捨てる」と不買を呼びかける人まで現れたのだ。

 そこでこの炎上を受けた8月15日、ミツカンは問題となった投稿を削除。「不快な思いをさせてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます」といった謝罪文を公式Xに投稿したのである。

 ただ、話はこれで終わらない。炎上企業が迅速に謝罪すると、事態は収束するのが一般的である。しかし、ミツカンの場合は、謝罪したことで、同社が炎上していたことをまったく知らなかった人々にも騒動が広く伝わってしまったのである。つまり、謝罪が新たな“燃料”になったのである。

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