なぜミツカンは謝ったのか? 「女性蔑視」批判をスルーできなかった、オトナの事情:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
SNSで冷やし中華の投稿が炎上したミツカンが、謝罪によりさらに炎上している。ミツカンはなぜ謝罪をしたのか。同社が守りたかったものや、背景にある事情とは……。
「なんで謝るの?」
まず、SNSでは「なんで謝るの?」「謝る必要ないでしょ」「こういう言いがかりに屈すると、クレーマーがつけあがるだけだから本当にやめてほしい」など、ミツカンの「弱腰」な企業姿勢が叩かれてしまった。
これまではSNS上での論争にとどまっていたが、有名企業であるミツカンが公式に謝罪を表明したことで、ネットメディアがこれを「ニュース」として報じることになった。記事では、炎上ウォッチャーや専門家の皆さんが「謝罪したのは悪手」「キャンセルカルチャーの悪しき前例となる」など、やはりミツカンの危機管理を酷評し、注目を集めてしまったのである。
まさに踏んだり蹴ったりという感じだが、こうなってしまったのはしょうがない部分がある。今回のミツカンの炎上は、謝罪の必要がまったくない。むしろ謝罪したほうがズルズル批判が殺到する「非実在型炎上」だからだ。
これは分かりやすく言えば、SNS上でほんの一部の人が大騒ぎをして、それを野次馬的に見ている人や、批判している人たちのコメントが盛り上がっているだけの現象だ。明確な不正や人権侵害行為などがあったわけでもなく、あくまで「個人の感覚」で断罪・糾弾し、最終的には「不買運動」を呼びかけるパターンが多い。「そこまで大騒ぎをすることじゃないのでは?」といさめると、「買う買わないは消費者の自由だろ!」とキレる人が多い。つまり、客観的な事実よりも「私が不快に感じた」が主たる原動力の炎上なのだ。
そんな非実在型炎上、企業側のベストな対応は「無視」である。この炎上は文字通り、企業側が謝らなくてはいけないような落ち度は実在しない。では、何が燃え盛ったのかというと、「お前らのせいで不快になっただろ」「こんな会社は潰れてしまえ!」という個人的な感情である。これを説明や釈明で鎮めることは不可能だ。何か言えば、「言い訳をするな!」と火に油を注ぎかねない。
実際、このような対応をする企業は増えてきている。分かりやすい例としては、AFP通信の「誤報」がきっかけで「移民推進だ」と批判され、不買運動を呼びかけられた亀田製菓のケースがある。また、「赤いきつね」のCMが「性的だ」と批判され、一部の人たちから不買を呼びかけられた東洋水産のケースもそうだ。
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