チャンネル登録者35万人→合計300万人 『コロコロコミック』が小学生男子相手に“本気”でやったこと(3/4 ページ)
『コロコロコミック』が、YouTubeやNintendo Switchでの取り組みに力を入れている。誌面でのコンテンツに加えて、デジタル戦略に力を入れる狙いについて、同誌の小林副編集長に話を聞いた。
次世代のポケモンを作りたい、初のゲーム作りに挑戦も批判殺到
YouTube戦略で成果を上げた後、次の一手として「自らゲームを作る」挑戦に踏み出した。小林氏は「自らの手で次世代のポケモンができたらいいな」と考えていたという。
ヒントは子どもたちの生活にあった。コロコロコミックのイベント会場では、待ち時間の間にSwitchで遊んで過ごす子どもが多かったという。「スマートフォンをまだ持っていない子どもたちにとって、最も身近なデジタルデバイスはSwitchではないのか。ならば、ここにコンテンツを届ければ響くはず」と仮説を立てた。
そこで2023年3月、小学館初のオリジナルゲーム『カブトクワガタ』をSwitchのダウンロード専売ソフトとして発売した。昆虫同士を戦わせるゲームで、漫画から生まれた企画ではなく完全オリジナルゲームだ。
Switch内にあるオンラインショップ「ニンテンドーeショップ」において、ダウンロード販売部門で最高3位を獲得するヒットとなり、パッケージ版での発売にもつながった。
発売当初は「コロコロがゲーム?」「この時代に昆虫?」といった否定的な声も少なくなかったという。特に、ゲーム内の全ての文字をAIで読み上げる機能には、「タイトルやスタッフクレジットまで全て読み上げる必要があるのか」と批判が集まった。
実はこの機能は、漢字がまだ読めない子どもたちのために用意されたものだ。小学館の子ども向け雑誌『小学一年生』では、全ての文字にふりがなを付ける文化があり、その発想を受け継いだという。読めない漢字があると子どもは毎回親に読み方を聞くことになり、親にとって負担になる。そこで親の手助けがなくても理解できるように工夫した。
ただし、ゲームの画面は小さいため、雑誌のように全ての文字にふりがなを付けるのは難しい。そこで代わりに導入されたのが、音声で文字を読み上げる機能だった。
最初は否定的な意見が多く、小林氏も「傷ついた」と苦笑する。しかし、全盲のプログラマーから「全盲でも遊べるこのゲームは、日本のアクセシビリティーの革命だ」と称賛されたり、ゲーム実況者から「虫のクオリティーが抜群。実際にやってみたらよくできているゲーム」と評価を受けたりしたことで、次第に肯定的な意見が広がった。小林氏は「批判されたとしても、子どものために作ったものは他の誰かのためになる。今回は、全盲のプログラマーの方に届いてうれしい」と話した。
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