チャンネル登録者35万人→合計300万人 『コロコロコミック』が小学生男子相手に“本気”でやったこと(4/4 ページ)
『コロコロコミック』が、YouTubeやNintendo Switchでの取り組みに力を入れている。誌面でのコンテンツに加えて、デジタル戦略に力を入れる狙いについて、同誌の小林副編集長に話を聞いた。
『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』で溶接漫画、地方創生プロジェクトへ
2022年11月からは、コロコロコミック編集部と自治体が連携した「ふるさと納税」企画で地方創生にも力を入れている。返礼品として、同誌が企画するイベントへの参加体験を用意。第1弾では、静岡県沼津市にある泊まれる公園「INN THE PARK(インザパーク)」と組み、公園内にある球体テントに泊まって親子の思い出を作るイベントを実施した。
きっかけは、小林氏が日常の中で抱いた思いだった。自宅前でのキャッチボールは近隣からクレーム、公園では「ボール遊び禁止」の貼り紙。「都会は子どもに対する寛容度が低い」と感じ、郊外で親子の体験イベントを提供する道を模索した。
そこで注目したのが「ふるさと納税」だった。2008年から始まったふるさと納税は、2015年の制度改正により控除限度額が2倍になったことで、一気に受け入れ寄付金額が増加。市場の伸びが予測できたことから、今後よりふるさと納税が身近になっていくのではと考えたそうだ。
以降、神奈川県鎌倉市の湘南モノレールでの「1日駅長体験」、静岡県沼津市にある影山鉄工所での「溶接体験」など、ふるさと納税の返礼品としての企画を実施した。鉄工所の企画では人気漫画『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』とコラボして、溶接をテーマにした特別漫画を制作したという。
また、これらの取り組みが話題になり茨城県庁から相談があり、茨城県立歴史館とのタイアップイベントも実施した。クイズラリーに参加したら認定証を受け取れるイベントや、フォトスポットの設置などを行った。その結果、1カ月の動員数が前年比300倍に跳ね上がるなど大きな反響を呼んだという。
電子書籍市場では、子ども向け漫画が少ない
出版ジャーナリストで電流協アワードの審査員も務めた飯田一史氏は、同セミナーに出席し「電子書籍市場では漫画の売り上げが大きいものの、子ども向け漫画はほとんどシェアを占めていない」と話した。背景には、親世代が「子どもに電子漫画を読ませること」へ抵抗を感じていることや、子ども自身がスマートフォンを持っていなかったり、決済手段の制約があったりする事情があるという。
一方で、本屋が少ない地域が増えており、子どもが漫画に触れる機会そのものも減ってきているという。飯田氏は「子どものころから漫画に親しみ、大人になっても読み続けるという循環が成立しにくくなっている」と指摘。その上で「コロコロコミックがYouTubeやSwitchを通じてコンテンツを届けようとしている試みは、出版業界全体にとっても非常に重要だ」と強調した。
子どもたちに本気で向き合った挑戦を続けるコロコロコミックの今後の取り組みに注目だ。
【2025年9月2日午前9時9分 『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』の表記に誤りがありましたので訂正いたしました。】
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