「時短なら管理職を辞めてくれ」──これって違法?【事例で解説】(3/3 ページ)
女性管理職を増やす動きが活発化していますが、果たして、時短で管理職は可能なのでしょうか。その課題と企業側の対応について考察します。
管理職の時短勤務には、どう対応すべきか
管理職が時短勤務を希望する場合は、まず「時短管理職者の権限・業務内容を洗い出し、明確にする」ことが重要です。次いで「サポート体制の整備」も実施しましょう。つまり「時短=降格」ではなく、時短勤務でも管理職の責務を全うできるよう、企業がサポートを行う必要があるのです。「代理制度を置く」「役割を他のメンバーと分担する」「管理職者の権限・業務内容を効率化する」などが挙げられます。
サポート体制を整備する際は、職場内の各メンバーの業務内容や管理職の時短勤務による影響などもしっかり把握しましょう。例えば、毎週金曜日の午後4時から開いていたミーティングを時短管理職者の都合で午後2時からに変更したい場合、メンバーの業務に多大な支障をきたすのであれば他の方法を検討するべきです。
上記の対応をした後「どうしても管理職の責務が果たせない」と企業が判断した場合、本人に十分な説明をした上で、人事権裁量による降格もありえます。ただし「降格扱い」にする場合、あらかじめ就業規則への明記が必要です。
また、降格した元管理職の人が、時短勤務の終了や成果を上げた場合など再び管理職にチャレンジできる環境があれば、キャリアを絶たれることなくモチベーションを維持しながら働くことが可能になります。
企業は「時短×管理職」とどう向き合うべきか
これからの人事制度は、労働時間という軸ではなく「役割」「成果」の軸で社員を評価するケースが増えるでしょう。そうなると「時短勤務=職務が全うできない」というロジックは通用しません。むしろ、限られた時間で成果を出すことで、生産性の向上につなげる意識改革が必要です。一方で労働者側から見ると、勤務時間が短くなった分、相応のパフォーマンスを要求される厳しさがあるでしょう。
ワークライフバランスが求められる日本社会において「時短×管理職」の選択肢を広げることは、優秀な人材を確保するための重要な戦略になります。企業はこの課題に真剣に向き合い、制度・意識両面で変革することが求められています。
木村政美
1963年生まれ。旅行会社、話し方セミナー運営会社、大手生命保険会社の営業職を経て2004年社会保険労務士・行政書士・FP事務所を開業。労務管理に関する企業相談、セミナー講師、執筆を多数行う。2011年より千葉産業保健総合支援センターメンタルヘルス対策促進員、2020年より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。
現代ビジネス、ダイヤモンド・オンライン、オトナンサーなどで執筆中。
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