イオンの攻勢、セブンの苦境――「スーパー大再編時代」と寡占化の行方:小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)
各地でM&Aを行い、小売業のトップの座を確立しつつあるイオン。一気に攻勢をかける理由は何なのか。そして次なるライバルはどの企業なのか。
筆者プロフィール:中井彰人(なかい あきひと)
みずほ銀行産業調査部・流通アナリスト12年間の後、独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。執筆、講演活動:ITmediaビジネスオンラインほか、月刊連載6本以上、TV等マスコミ出演多数。
主な著書:「小売ビジネス」(2025年 クロスメディア・パブリッシング社)、「図解即戦力 小売業界」(2021年 技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。
イオンが、首都圏や京阪神のグループ内スーパーの再編成を行う。首都圏では、食品スーパーのユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(以下、USMH)傘下のマックスバリュ関東に、ダイエーの関東事業とイオンマーケット(ピーコックストア)を統合。京阪神では、ダイエーと食品スーパー光洋を統合する。これにより、首都圏では売上規模1兆円超、京阪神では3000億円規模のスーパーが誕生する。
近年、イオンはグループのスーパーを地域ごとに再編し、2大都市圏では地域子会社にほぼ集約する形となった。これまでM&Aを重ねてきたイオンが、ついに各地でトップシェアを確立し、一気に攻勢に転じようとしているのだろうか。
本稿では、これまでのイオンの歩みを振り返りながら、現在の戦略と今後の展望を見てみることにしたい。
異業種とも争うイオン
これまでイオンは、地域の食品スーパーをM&Aで傘下に収めることで、シェアを拡大してきた。近年は、傘下のスーパーを地域単位で統合し、物流や後方機能の効率化、システムの共通化による生産性向上を進めている。
基本的には、中核となる総合スーパー子会社のイオンリテールが本州エリアをカバーしている。そのため、北海道はイオン北海道、九州はイオン九州など、各地域で総合スーパー子会社を軸とした統合が進められてきた。
本州エリアに関しては、食品スーパーの地域子会社を中心に統合が進められており、中部エリアではマックスバリュ東海がその中核となっている。中国・四国に関しては変則的で、当初は地域の食品スーパーをマックスバリュ西日本に統合したが、その後、四国の有力総合スーパーであるフジを軸とする方針へと転換。現在では、売上高8000億円を超える地域子会社ができている。
これらの子会社の地域での位置付けを見ると、イオンリテールの地域売り上げを除いても、おおむねトップシェアを占める存在感がある。地方における業界の勢力図は、イオンと地域有力スーパーが競い合う構図になっていることが見て取れるだろう。
地域ごとの状況を見ると、北海道と東北では「イオンVSアークスとヨークベニマル」、中部ではバローやユニーと並ぶ。一方、九州や中国・四国では、イオンが圧倒的トップであり、イズミやハローズ、リテールパートナーズなどが対抗する構図となっている。
ただ、九州や中国・四国、中部などでは、食品スーパーのみならず、ディスカウントストアやフード&ドラッグも強い存在感を示している。トライアルやコスモス薬品、ダイレックス(サンドラッグ・グループ)、クスリのアオキ、ゲンキーといった企業が急成長しており、異業種との競争は激しさを増している。
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