インタビュー
売れなかった「水筒みたいな氷のう」が逆転ヒット メーカーも予想しなかったSNSの“バズ”(1/3 ページ)
“売れない氷のう”が、SNSをきっかけに一大ヒットに転じた。ピーコック魔法瓶の携帯氷のうとは……?
2023年夏、SNSでの口コミをきっかけに、ある商品が品切れ状態となるほど注目を集めた。老舗魔法瓶メーカー、ピーコック魔法瓶工業が展開する携帯氷のう「アイスパック」(実勢価格3990円)である。
2025年6月時点でシリーズ累計出荷数は60万本を超えたが、発売当初の2年間は販売不振に苦しんでいた。なぜ“売れない商品”がここまでの成長を遂げたのか。
魔法瓶技術の新たな応用先
アイスパックは、氷のうを真空断熱構造の専用ホルダーに収納することで長時間の保冷を可能にした携帯型アイテムである。保冷性能の高さは、同社が1950年の創業以来培ってきた魔法瓶技術の応用によるもので、製品テストでは0度付近の温度を長時間維持できる結果が確認されている。
真空断熱ホルダーは外側が結露しない構造となっており、カバンの中でも他の持ち物を濡らさない点がユーザーから評価されている。加えて、コンパクトな形状と取り出しやすさも支持され、2024年度にはグッドデザイン賞を受賞した。
この商品の着想は、同社の山中千佳社長の個人的な経験に端を発する。夏のゴルフプレー中に使用していた従来型の氷のうがすぐにぬるくなることに不便を感じ、自社の魔法瓶ボトルに氷のうを入れてみたところ、プレー後も冷たさを維持していたという。これが商品開発の起点となった。
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