美容室倒産、過去最多ペース 人手不足と値下げ競争が直撃
美容室の倒産が過去最多ペースで進んでいる。フリーランス化や人材流出、物価高が経営を圧迫し、大手でも減益が目立つ。帝国データバンクは「値上げ戦略とデジタル活用が今後の鍵」と指摘する。
帝国データバンクが行った「美容業(美容室)」経営業者の倒産発生状況調査によると、2025年1〜8月に発生した美容室の倒産件数は157件(負債1000万円以上、法的整理)となり、年間で最多だった前年同期(139件)を上回った。倒産件数は3年連続で前年から増加し、通年でも2年連続で年間最多を更新する可能性があり、美容室の生き残り競争が一層激化している。
人手不足が深刻化、倒産要因に直結
昨今は「美容師のフリーランス化」が進み、スキルや知名度のあるスタイリストの採用が難しくなっている。加えて、低賃金や長時間労働の改善を求める既存スタッフの流出が加速し、従来のサービス維持が困難になるケースも出ている。2025年の倒産事例のうち「人手不足」が直接要因となったものは9件で、8カ月累計で前年通年(9件)にすでに並んだ。
業績は二極化、「増益」と「赤字」が併存
美容室の2024年度(2024年4月〜2025年3月期)の業績を見ると、コロナ禍を底に「身だしなみ」への支出は回復傾向にあり、「口コミやSNSによる集客効果が顕著」との声もあった。その結果、「増益」を確保した事業者は36.4%に上った。
一方で、「赤字」となった事業者は33.3%を占め、利益を減らした「減益」は26.0%で、3年連続で増加。利益確保に苦戦する美容室も多く、業況の二極化が進んでいる。
物価高と値下げ競争、経営を圧迫
物価高を背景に節約志向が強まり、リピーター客でも来店頻度が減少している。特に新規出店が多い都市部では、顧客獲得のための割引クーポン発行などによる実質的な値下げ競争が発生し、売上高が伸び悩むケースが目立った。
加えて、スタイリストやスタッフの給与水準引き上げ、染料など美容資材の価格高騰、美容サロン検索・予約サービスへの広告費増加など、各種運営コストの上昇が経営を直撃。体力のある大手チェーンでさえ減益となる事例が相次いでいる。
「値上げ戦略」とデジタル活用が鍵に
帝国データバンクは「サービスメニュー別に段階的な価格引き上げや、常連客向け限定プログラムを導入し、失客を最小限に抑える『値上げ戦略』が広がっている」と指摘する。その上で「価格戦略の見直しや、顧客データに基づくマーケティングといったデジタル技術の活用を通じ、値上げに見合う価値をどう提供するかが今後の美容室経営に求められる」と分析している。
今回の調査は、負債1000万円以上・法的整理による倒産を対象とし、2000年1月1日〜2025年8月31日を調査期間とした。
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