「地面が光るLED信号灯」なぜ登場? 歩行者の安全をデータで支える新技術(2/3 ページ)
大阪府守口市に日本初の埋込型LED信号灯が登場した。横断歩道の足元から光で注意を促し、1年の実証実験で安全性をデータで確認。歩行者の安心と事故低減を目指す新技術とは……。
1年がかりの安全性検証を経て導入
守口市での信号灯設置に際し、アトラス社は茨城県にある日本自動車研究所で1年間の実証実験を行った。大型車両やバイク、自転車による走行実験を繰り返し、雨天時の滑りやすさや騒音、横断歩道への影響などを詳細に分析し、日本での安全基準をクリアした。
埋込型信号灯は、現状の法的な位置付けでは信号機ではなく「道路付属物」とされ、街灯と同様の扱いだという。このため現在は黄色の点滅のみで、あくまで補助的な役割にとどまっている。
一方、海外では普及が進んでおり、特に韓国の都市部で導入が加速。歩行者信号機と連動し、赤や青の表示も可能なシステムが実用化されている。
韓国の警察庁によると、床型歩行信号表示装置の設置数は2022年の3078台から、2025年には1万3718台まで増えた。首都ソウルに隣接する仁川市(インチョン)では、設置により自動車と歩行者の事故頻度が全体で13.2%、スクールゾーンでは24.4%減少したとの報告もある。
守口市での検証でも、補助的な装置ながら安全性の向上が確認された。夜間雨天時の平均走行速度は時速4.9キロ低下し、制限速度以下で走行する車両も24.6%増加した。
さらに、横断歩道手前40〜50メートル地点でブレーキを踏む車両は、晴天時で32.5%、雨天時でも9.7%増加。ドライバーからの横断歩道の視認性が向上したことにより、早期のブレーキ開始につながった。
歩行者が横断歩道で待つ時間も短縮し、住民アンケートでは視認性向上が100%、総合満足度も87%という反響を得た。「想定内だが、いい結果が出た」と坂口氏は手応えを語る。
筆者も平日の午後6時30分頃に現場を訪れたところ、遠くからでも点滅は視認でき、歩行者が横断歩道付近に来ると減速して停車する車両がほとんどだった。
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