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給与上がらず、責任と仕事だけが増加 「静かな昇進」をさせる“危険な職場”の大問題河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)

「給料は変わらないのに、仕事だけが増え続けている」「役職は変わらないのに、後輩の育成がタスクに加えられた」といったような相談がこの数年で増えています。年齢は30代がほとんどです。ひょっとすると、あなたも似たような状況に陥っていませんか?

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働く人のための制度を充実させたはいいが……

 かたや日本ではどうでしょうか? 

 昇進のプロセスはおろか、「中間管理職」の定義も不明瞭のままです。中間管理職は経営層の決定やビジョンを現場の部下に分かりやすく伝える「橋渡しの役割」もあれば、チームや部門の目標達成に向けて、業務の進捗管理、人員配置、部下の育成・評価を行う「現場のマネジャー」としての役割も求められます。加えて、自身もプレイングマネジャーとして、個人のノルマやタスクをこなすことが多くあります。

 さらに、育児休暇、介護休暇、看護休暇、病気休暇、年次有給休暇などなど、「働く人の人生」に合わせた休暇を取得できるようにはなりました。ですが、その穴埋めは「あとは現場で一つよろしく!」のオンパレードです。

 一方で、少子高齢化で労働人口は減り、業界ごとに偏りはあるものの、人手不足は一向に改善されていません。さらに、管理職になりたがらない人が増えていることで、単に現場の働き手が足りないという問題だけでなく、組織の「要」となるべきリーダー層が不足する、深刻な事態も増えてきました。

 本来、企業の責任で人材を増やすべきところを、増やすこともないままに、制度ばかり充実させている。その結果、「肩書きが変わらない、権限が変わらない、給料が変わらない、通常のノルマが変わらない、ただただ責任と仕事が増えるだけ」のサービス残業の現代版=日本版「静かな昇進」が、にわかに増えつづけているのです。

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提供:ゲッティイメージズ

 もし、あなたが「静かな昇進」状態だと感じたなら、まずは業務の「見える化」をしてください。 あなたが日常的におこなっている業務内容を、「必須業務=現在のポジションのタスク」と「貢献業務=本来は管理職の業務」に分ける。次に、この事実を基に上司と建設的な対話を試みましょう。

 その際、「このままでは成果の質が下がってしまう可能性があるため、業務内容を見直したい」といった具体的な目的を伝え、協力的な姿勢を示すことが重要です。

 一方で、企業は「静かな昇進」が、優秀な人材の離職や組織の疲弊を招き、企業の基盤を揺るがしかねない、という現実に正面から向き合ってください。

 まず、評価制度と報酬体系の透明化を実施する。その上で、「静かな昇進」をした社員に、「あなたの努力と貢献をちゃんと見ています」というメッセージを送る。そして、本人の昇進の意思の確認もお忘れなく。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) など。

 新刊『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)発売中。


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