無駄すぎる日本の「1on1」 上司が部下から引き出すべきは“本音”ではない:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
上司と部下の1on1ミーティングを実施する企業が増えています。「若手社員のために!」と経営層や人事が意気込むものの、現場からは戸惑いの声も……。なぜ、日本企業では1on1がうまく機能しないのでしょうか。
いつ頃からでしょうか。「1on1」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。
経営層や人事担当者たちは、若手社員のための1on1であることを強調してこのように話します。
心理的安全性が必要ですから。うちの会社でも1on1を月一回やらせています。
今の若い世代は突然辞めちゃうでしょ。いろいろ原因が言われているけれど、やっぱり人間関係だと思うんですよね。ガス抜きのためにも、1on1を取り入れています。
今の若い世代とはジェネレーションギャップがありますから、やはりそこは上司から情報をとりにいかないとギャップは埋まらないでしょ。1on1を確実に実施すれば、河合さん(筆者)の言うところの『心の距離感』が縮まることを期待しています。
一方、現場の社員たちからは、以下のような悩みをたびたび相談されます。
毎月の1on1で何を話していいのかが分からず、ストレスになっています。
部下の半分が年上で、1on1がやりづらくて困っています。どうしたらいいでしょうか?
上司が毎回1on1で、『ここでは本音で話していい』と圧をかけてきます。会社で本音って必要ですか?
これまでも上層部と現場の温度感の違いは散々感じてきました。その中でも1on1は全社員が対象、かつ上司と部下といった立場の違いもあるためか、現場から聞こえてくるのは悲鳴と困惑がほとんどです。
流行をコピペして「仕事した感」を出す上層部 その実態は……
思えば「女性活躍推進」「ダイバーシティ」あたりからでしょうか。上層部の一部の人たちが、めったやたらに米国で流行った人事制度をコピペするかのごとくマネして導入するようになりました。リスキリング、ジョブ型、パーパス経営、ウェルビーイング、ワーケーション、エンゲージメント経営……。片仮名を次々と使っては「僕たち仕事しています感」を出す一方、実際は「あとはよろしく!」と現場に丸投げです。
もちろんコピペ導入された制度や教育が役に立つ場合もあります。しかし、効果を出すためには上層部が目的とゴールを具現化し、組織全体に共有する必要があります。
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