広報・告知がここまで変わる Sora2で“伝わる動画”を簡単生成する方法(2/2 ページ)
OpenAIが提供している動画生成サービス「Sora」の新バージョン(Sora2)が限定公開された。今回は、従来のSoraとの違いを含めて紹介する。
動画の完成度を格段に上げるコツ
まるごとお任せでもこれだけのクオリティなのですが、さらにプロンプトの指示により細かなシーンを指定することもできます。
このときのプロンプトですが、YAMLやJSONなどAIで理解しやすい記法がよいとされていますが、筆者はかなり適当にプロンプトを書きました。ポイントはシーンを3つに指定して、それぞれ何を表示させるのかを明記しているところです。
【プロンプト】
タイトル: “来年度当初予算で情報化投資事業の予算要求するための案内”
言語: "日本語"
長さ: "10秒"
シーン:
- 時間: "0s-3s"
内容: |
スーツ姿の男性アナウンサーがニューススタジオのデスクで読み上げる。
セリフ: 「職員のみなさまにお知らせです」
背後スクリーン: 「財政課査定資料提出の締め切り迫る」という速報テロップ。
画面下: 天気・時刻・株価などのニュース番組らしいUI。
雰囲気: 真面目で緊迫感のある速報。
- 時間: "3s-7s"
内容: |
役所内の事務室の風景に切り替わる。
中年の男性職員がインタビューに答える。
セリフ: 「昨年度は説明資料が揃わなくて、財政課の担当には迷惑かけちゃいましたからねぇ」
カメラ: 中継カメラ風でわずかに揺れる。
音声: 事務室の中の音、中継のノイズ混じり。
テロップ: 「今年は迷惑をかけられない」
- 時間: "7s-10s"
内容: |
再びスタジオに戻る。
アナウンサーが一瞬言葉に詰まり、真顔に戻して淡々とニュースを続ける。
背後スクリーン: 先ほどの男性職員の映像が映し出される。
スクリーン下テロップ: 「再発の場合おやつ抜きの処分」
全体の雰囲気: 面白さとニュース番組らしい硬さを両立する。
これで、細かくシーンを指定して動画を生成することができます。実際に生成させてみたところ、日本語のリップシンクもバッチリでした。
自治体で生かすSora2 告知・情報提供で役立つ動画生成術
以前、Soraが登場したときにも自治体の現場で動画生成AIがどのように活用できるのかについて、筆者の考えを書いていました。
(関連記事:動画生成AI「Sora」でプロモーション動画を制作してみた 自治体での活用法は?)
その時と比較して、生成される動画の品質が総合的に高くなっているので、筆者の考えもアップデートしておきましょう。
動画CMを生成して再認識しましたが、Sora2は単なる動画生成ではなく、人間の意図をくみとった「動画コンテンツ」を作成してくれるようになりました。つまり、プロンプトによる指示は、動画そのものの指示ではなく、もう少し抽象的な「意図や目的」を示すことでも十分に機能するということです。
したがって、伝えたい内容が明確な「イベント告知」や「地域住民向けの情報提供」とは非常に相性がよいと思います。
また「観光プロモーション」については、実際に撮影した「本物の動画」であることが価値を持つので、動画生成AIの活用場面は限定的かもしれません。
しかし、観光プロモーション用の動画コンテンツであっても、そのメリハリをつけるために意図的に「個性のない動画」を挟むことが有効な場面もあります。そのような場合に、動画生成AIはうまく活用できるのではないでしょうか。
少なくとも実際の最終成果物に至らなくても、関係者間でイメージを共有したり、映像上のアイデアを得るという目的で使うだけでも効果があるものと考えます(少なくとも、スキンケアクリームの広告では、筆者自身の引き出しが増えたような感覚を持っています)。
なお、Sora2で生成した動画を見ると分かりますが、フェイク動画が簡単に生成されないよう、動画にはウォーターマーク(定期的に表示される「Sora」という文字とロゴ)が付与されます。筆者も詳細を確認していないのですが、有償ユーザーには条件付きでこのウォーターマークをつけないで動画生成する方法も提供されるでしょうから、ビジネス用途でも十分に活用されることが期待できます。
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