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「日産スタジアム」「味スタ」「ほっともっとフィールド」近年過熱する公共施設の“ネーミングライツ”がもたらす功罪(3/3 ページ)

ここ10年ほどで目にすることが増えた、公共施設のネーミングライツ。その功罪について考えていく。

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ネーミングライツのメリットとデメリット

 2020年の東京オリンピックでメイン会場となった国立競技場では、2026年から三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が命名権を取得する。取得金額は5年間で100億円規模となる見通し。これまで、命名権料は年1億円規模の日産スタジアムが最大であり、国立競技場は相場を大きく上回る規模である。

 スポーツ施設の命名権は自治体の公費負担を低減する効果がある。また、知名度の大きい企業が命名権を取得すれば「○○市立総合競技場」という名称よりも認知度が高まりやすい。デメリットは企業側の都合で名称が変わってしまうことだろう。1997年に屋外球場に屋根をつけて開業した「西武ドーム」もグッドウィルドーム、メットライフドームなどの名称を経て、2022年にベルーナドームへと名称を変更した。頻繁に変わると球場の立地があやふやになり、新たな球場ができたと誤認識しかねない。

 筆者の目には、昨今ネーミングライツの動きが過剰になっているように見える。公費負担低減のうま味を知った自治体は図書館や歩道橋、公衆トイレに至るまで命名権を販売するようになった。名古屋市の図書館では市民の反対により、命名権取得に応募した企業が辞退する事例も起きている。

 命名権の乱用は、命名権販売をあてにすることになって自治体財政が弛緩(しかん)することにもつながりかねない。命名権は大規模スポーツ施設にとどめるべきではないだろうか。

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


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