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ニコン「400億円」新本社の全貌 圧巻の劇場型アトリウム、階段で仕事……交流を生む数々の仕掛けとはオフィス探訪(1/3 ページ)

ニコンが約400億円を投じた「本社/イノベーションセンター」。200人を収容する圧巻の劇場型アトリウムや、階段に「働けるスペース」を設けた意味とは。コミュニケーション促進のために、どのような工夫を施したのか?

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連載:オフィス探訪

 長引くコロナ禍の影響は、人々の生活様式を変貌させた。それはビジネスパーソンの働き方もしかり。「働く場所=会社のオフィス」が当たり前だった世界は消え、テレワークが浸透した現代では、オフィスだけでなく自宅、コワーキングスペース、シェアオフィス、カフェに至るまで“働く場”は多様化している。

 この連載では、“働く場”の再定義が余儀なくされた現代において会社がどう対応するべきか。先進的な取り組みを行う企業を紹介していく。

 ニコンが約400億円を投じた新しい本社/イノベーションセンターは、同社ゆかりの地である東京・西大井に位置する。同社の発展を支えた大井第一工場の跡地で運用を始めてから、はや1年。さまざまな特徴的なファシリティを備える新本社を訪ねた。

 200人を収容する圧巻の劇場型アトリウムや、階段に「働けるスペース」を設けた意味とは。コミュニケーション促進のために、どのような工夫を施したのか? 移転プロジェクトチームの中核を担った4人のメンバーに話を聞いた。

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東京都品川区の光学通り(ニコン旧社名である日本光学工業に由来)に面した新オフィス(写真:同社提供)

近代的で自由な設計……「コミュニケーションが促進できるオフィス」の工夫

 エントランスに入ると、圧巻の大型スクリーンが目の前に映し出され、200人を収容できる劇場型アトリウムが出迎える。ここは、光学通りに面したニコンの新本社/イノベーションセンターだ。アトリウムでは階段の一段一段を座席として使用でき、新商品発表会、入社式、講演会などのイベントを開催できるほか、電源がありここで仕事もできるという。

 カメラ産業を牽(けん)引してきたニコンに対して、どうしてもレガシーな印象を持っていた筆者は、まずここで出鼻をくじかれた。近代的かつ自由なオフィス設計に驚く。

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劇場型アトリウム(写真:筆者撮影)
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ニコンミュージアム。一般の人々も自由に閲覧でき、エントランスからアクセスしやすい(写真:同社提供)

 「サイロ化に課題を感じ、コミュニケーションが促進できるオフィスにしたかった」(経営管理本部付 豊田陽介氏)

 旧オフィスがあった品川インターシティでは、賃貸ビルという性質上自由度にどうしても制約があった。30階建ての高層ビルの23〜30階にオフィスがあったが、フロアごとに部署が入っており、上下の行き来はほぼなかったという。

 そうした課題の解決と、従業員同士のコラボレーションを促進させ、事業をよりスケールさせる目的で、2021年11月に移転プロジェクトチームが発足した。コアメンバー11人の下に建築、ITなど各分野の分科会がひも付けられ、週に1回、選出されたメンバーは話し合いを重ねた。関わった人数は延べ200人にも及んだ。

 「コアメンバーは、本業の傍ら、オフィスコンセプトやデザイン、運用面などで毎日のように会議をしていました。分科会には会社の今後を担う20〜30代の若手社員を多く起用して、自分たちが働きやすい職場になるように意見を出し合ってもらいました。最終的には答申書を出してもらい、その意見を実際の設計に反映することもありました」(豊田氏)

 プロジェクト発足後、3年の期間を経て2024年に竣工。同年7月から運用を開始した。あえて、大井第一工場の跡地に建設した理由を聞くと、豊田氏は以下のように答える。

 「ゆかりの地に原点回帰したという思いがあります。工場跡地で面積が広いので、ラボや研究室を含めてさまざまな部署が集結でき『コミュニケーションの活性化』というコンセプトに見合うと考え、この地に建設することにしました」(豊田氏)

 今回の本社移転の目的は、主に以下の3つ。

  • 本社機能、事業部企画・営業機能およびR&D機能集約によるシナジー創出の促進
  • 従業員のエンゲージメント向上・コミュニケーション醸成
  • 環境配慮型オフィスによる社会課題解決への貢献(「ZEB Ready」「BELS・6つ星」取得)

 敷地面積1万8000平方メートル、延床面積4万2000平方メートル、6階建てで、3200人の従業員を収容可能な大規模なオフィス設計になっている。近隣には、各事業のラボやメール室、従来活用していたサーバルームなどが入るイーストサイト、グループ会社や請負会社などが入るウエストサイトが構える。

 それでは、実際の本社オフィスを詳しく見ていこう。

コラボレーションエリア、ダイニングなど接点を増やす機能をふんだんに

 フロアは横長で、端から端まで歩くと150メートルある広大な環境だ。まず、共有エリアの1〜2階を見ていこう。アトリウムを降りた1階には、一般利用ができるコンビニとニコンミュージアム、各事業ユニットが実験を行えるラボエリアがある。

 2階のエントランスを抜けると、B2B製品が展示されるショールーム、会議室、ラウンジ、ダイニングがある。ラウンジにはソファ席も用意されており、従業員同士での談笑や、休息の風景も見られた。まるでおしゃれなカフェだ。コーヒーサーバも設置してあり、格安でコーヒーを飲める。

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ラウンジ(写真:筆者撮影)

 ラウンジを抜けるとダイニングが広がる。550席あり、健康に配慮したさまざまなメニューを日々楽しめる。夜になると、アルコールの提供もあり、懇親会などで使用できるという。

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ダイニング(写真:筆者撮影)

 「旧オフィスでは社員食堂がなかったので、ダイニングを作りましたが、人の接点が非常に増えました。『ちょっと飯でも行こう』と同僚を誘いやすくなったと思います。今のご時世、飲みに誘うのはちょっとハードルが高いけど、社内にある食堂だと誘いやすいですね」(豊田氏)

 3〜6階は執務席。ただ、レイアウトが他社と異なる。フリーアドレスを採用しつつ、部署ごとにおおまかに分かれているグループアドレスエリアが、両端にあり、真ん中にコラボレーションエリアがサンドされているイメージだ。

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青部分がグループアドレスエリア、いわゆる執務席で、中央の黄色部分がコラボレーションエリア(画像:同社提供)

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