大阪のオフィス街・淀屋橋が一大観光地に? 展望施設が生む“人流と価値”の方程式(1/3 ページ)
大阪のオフィス街・淀屋橋が、大変貌を遂げつつある。2025年夏、御堂筋沿いに新たに開業した大型再開発ビル「淀屋橋ステーションワン」。最上階に設けられた新たな展望施設は、街の滞在価値を高め、ビジネス街の“観光資産化”を後押しする可能性を秘めている。
大阪のオフィス街・淀屋橋が、大変貌を遂げつつある。
2025年夏、御堂筋沿いに新たに開業した大型再開発ビル「淀屋橋ステーションワン」(高さ150メートル・地上31階建て)。規模こそ大きいものの、ほとんどのフロアがオフィスであり、近年、東京都内で話題を呼んだ「麻布台ヒルズ」や「東京ミッドタウン八重洲」などの再開発ビルのように、大きな商業ゾーンが設けられているわけでもない。
しかし、この建物には「観光客の流れ」を変えうる、ある施設が入居する。それは、最上階に設けられた無料の展望施設だ。
いまや展望施設は、どこも長蛇の列ができるほどの人気スポットとなっている。淀屋橋に生まれた新たな展望施設は、街の滞在価値を高め、ビジネス街の“観光資産化”を後押しする可能性を秘めている。
大型再開発が進む大阪・淀屋橋エリア。1935年に架橋された歴史ある現・淀屋橋の先には、御堂筋を挟んでツインタワー「淀屋橋ゲートタワー」(写真右・西側)と「淀屋橋ステーションワン」(写真左・東側)がそびえ建つ。2025年9月、ここに生まれた「新施設」が話題を呼んでいる(写真:若杉優貴)
著者紹介:若杉優貴(わかすぎ ゆうき)/都市商業研究所
都市商業ライター。大分県別府市出身。
熊本大学・広島大学大学院を経て、久留米大学大学院在籍時にまちづくり・商業研究団体「都市商業研究所」に参画。
大型店や商店街でのトレンドを中心に、台湾・アニメ・アイドルなど多様な分野での執筆を行いつつ2021年に博士学位取得。専攻は商業地理学、趣味は地方百貨店と商店街めぐり。
アイコンの似顔絵は歌手・アーティストの三原海さんに描いていただきました。
「オフィス街の再定義」へ ツインタワーが変える淀屋橋の価値
まずは大阪・淀屋橋エリアの再開発について簡単に紹介したい。
再開発が行われているのは、大阪のメインストリート「御堂筋」を挟んだ東西両側。
そのうち御堂筋西側に建設中の「淀屋橋ゲートタワー」は大和ハウス工業、住友商事、関電不動産開発とミズノ、白洋舎などの地権者組合を事業者主体とし、地上29階建て・地下2階・高さ135メートルの建物で、2025年末までに完成する予定となっている。
そして、御堂筋東側には今回紹介する「淀屋橋ステーションワン」が2025年6月より順次開業している。こちらの事業主体は、元々この地にあった中央日本土地建物と京阪HD、みずほ銀行で、建物の規模は地上31階建・地下3階建・高さ150メートル。今秋のうちに全館が開業する予定だ。
両ビルは、ともに地階で京阪電車の京阪本線と大阪メトロ御堂筋線それぞれの淀屋橋駅と直結されている。この京阪本線は伏見・京都方面まで伸びており、両ビルは大阪と京都を結ぶ交通結節点の駅ビル的存在でもある。
もともと両ビルの街区には10階建て前後の複数のオフィスビルが並んでおり、一部は戦前に建てられた古いものもあった。両街区ともに今回の再開発に際して、都市再生特別地区の指定を受けて容積率が1600パーセントに引き上げられ、超高層ビルの建設が実現。淀屋橋の景観は一変することとなった。
さて、「景観が一変した」といえども、淀屋橋といえば今も昔も西日本きってのオフィス街。再開発によって生まれたツインタワーもオフィスが主体であり、一足先に完成した東側の「淀屋橋ステーションワン」の館内には、中央日本土地建物やみずほフィナンシャルグループなどといった大手企業が入居している。
商業エリア(物販)はおもに地階から3階までの一部のみで、京阪HD傘下の京阪流通システムズが運営。2025年6月から11月ごろにかけてスイーツ店やベーカリー、カフェ、コンビニエンスストアなどが順次開店している。
駅の利用者やオフィスワーカーにとって便利な店舗がそろうものの、近年東京で話題を呼んだ「麻布台ヒルズ」や「東京ミッドタウン八重洲」「高輪ゲートウェイシティ」といった再開発ビルのような大型の商業ゾーンやラグジュアリーなホテルがあるわけではない。
しかし、このステーションワンには「観光客の流れ」を大きく変えうる施設が入居している。それは、9月1日に開業したばかりの無料展望施設――「淀屋橋スカイテラス」だ。
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